2011 Fiscal Year Research-status Report
日本における労働統合型社会的企業モデル構築のための国際比較研究
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23730366
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Research Institution | Komazawa University |
Principal Investigator |
松本 典子 駒澤大学, 経済学部, 准教授 (90453563)
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Project Period (FY) |
2011-04-28 – 2014-03-31
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Keywords | 社会的企業 / NPO / WISE / 市民活動 / 経営学 / 評価 / 国際情報交流 / ソウル |
Research Abstract |
当該研究は、雇用情勢が悪化する日本において、雇用創出の側面に社会的課題を見出しその解決を担う労働統合型社会的企業(Work Integration Social Enterprise)の組織特性を国際比較研究(理論的研究および実証的研究)から分析し、日本の多様な制度に整合するビジネス・モデルを構築することを目的としている。 当該年度は、労働統合型社会的企業に関する文献整理を行い、理論的研究を深めて、実証的研究に必要な調査票を作成した。調査票は雇用創出や社会的課題の解決に必要となる「事業性」に関する項目とともに、「社会性(ソーシャル・キャピタル、地域の人たちとの相互扶助・連帯、構成員の自発性の担保、働きやすい労働環境、制度[障害者自立支援制度など]に対するアドボカシー等)」に関する項目を作成することで労働統合型社会的企業が直面する課題を考察した点に意義がある。 実証的研究では、調査票に基づいて国内の障害者支援団体に訪問インタビュー調査(実証的研究)を行った。また、研究に係る研究会やフォーラムにも参加した。当該研究は、両者より得られた情報から、障害者支援団体の普遍的な組織特性を抽出することによって、労働統合型社会的企業のビジネス・モデル構築を目指している点に重要性がある。 国際比較研究では、韓国・ソウルの社会的企業にインタビュー調査を実施した。調査票は、国内調査において作成したものをベースに、各国の障害者支援施策を反映させたものとなっている。調査終了後にインタビュー記録を作成し、日本の労働統合型社会的企業モデルに示唆を与える部分をまとめ、学会・研究会で報告を行った。 当該年度の最終段階には、労働統合型社会的企業をより普遍的なものにするための社会評価手法に関しても検討を始めた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
交付申請書に記載した通り、文献の整理・講読により理論的研究を深め、実証的研究に必要な調査票を作成した。日本国内では、障害者を支援する先進的な労働統合型社会的企業へ訪問インタビュー調査を実施した。韓国の社会的企業にもインタビュー調査を実施し、国際比較研究を予定通りに実施した。調査終了後にインタビュー記録を作成し、日本の労働統合型社会的企業モデルに示唆を与える部分をまとめ、研究会で報告した。以上のことから研究はおおむね順調に進展しているといえる。
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Strategy for Future Research Activity |
次年度は当該年度に得られた結果を踏まえて、国内では調査結果を補足・強化するための訪問インタビュー調査を行う。さらに、韓国・ソウルの社会的企業および英国のソーシャル・ファームに訪問して資料収集等を行う(英国への訪問が困難な場合は、北米・欧州で行われる学会・研究会に参加して海外の労働統合型社会的企業に関する情報収集を行う)。最終的には国外で得られた情報を含めて、日本の労働統合型社会的企業が直面する課題を整理し、ビジネス・モデルの仮説を強化する。 最終年度には、平成23・24年度に得られた結果を踏まえて、国内における訪問インタビュー調査の補足調査を実施する。そして、労働統合型社会的企業の直面する課題を整理・検討し、関連する制度なども踏まえてビジネス・モデルを提示する。雇用創出という実績・事業性のみではなく、社会性にも配慮した評価基軸についても成果発表を行う(成果報告書を作成・製本する)。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
[次年度に使用する予定の研究費が生じた状況] 当該年度は採択時期の関係で研究のスタートが遅くなってしまったため、国内インタビュー調査と韓国・ソウル調査に集中して研究を行った。大学の学務の日程上、台湾における調査を行うことが難しくなったため、台湾出張に係る研究費は基金の制度を活かして次年度に請求させていただくことにした。[翌年度以降に請求する研究費と合わせた使用計画] 当該年度の研究・情報収集で、台湾における労働統合型社会的企業に関してはあまり進展がないことが明らかになったため、台湾出張のために繰り越した予算を韓国・ソウルでの調査研究費に変更する。韓国・ソウルへ変更する理由は、労働統合型社会的企業にも影響を及ぼすと考えられる協同組合基本法が2012年に制定・公布され、社会的協同組合を設立することが可能になったことにより、ソウルにおける社会的企業に大きな変化が現れると考えられるためである(緊急性がある)。したがって平成24年度は、韓国・ソウルへの調査および英国における資料収集(あるいは北米・欧州で行われる学会への参加による情報収集)を中心に、理論的研究のための図書・資料購入、日本国内における訪問インタビューの補足調査に研究費を使用する。平成25年度に関しては、交付申請書の計画通りである。
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