2011 Fiscal Year Research-status Report
吸収能力概念の一般化可能性の探索を目的とした国際比較および移転経路比較
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23730374
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Research Institution | Rissho University |
Principal Investigator |
高橋 俊一 立正大学, 経営学部, 講師 (00547896)
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Project Period (FY) |
2011-04-28 – 2014-03-31
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Keywords | 国際研究者交流 / 地域統括拠点 / 知識移転 / 吸収能力 / 多国籍企業 / 日系企業 |
Research Abstract |
当該年度は、多国籍企業が関わる知識移転における吸収能力概念の一般化に際して、移転経路に関する研究調査を実施した。応募時の交付申請書においても指摘したように、これまでの研究代表者の研究を含めた先行研究においては、知識の送り手と受け手の間のダイアディックな知識移転経路にのみ焦点を絞ってきており、多様な知識移転経路にその対象を広げるべきと主張してきた。しかしながら、これまでの研究代表者の調査から明らかになったことは、研究代表者が取り組んできた移転経路である、本社から海外子会社への知識移転においては、実際には地域統括拠点を経由するケースが多いということである。しかも地域統括拠点を経由すると、知識移転が円滑に進まない、つまり、地域統括拠点が海外子会社における知識の吸収能力の障害になっている場合がある、という示唆を各所における聞き取り調査で得た。したがって、本研究では、吸収能力概念の一般化に際しては、本社から海外子会社への移転経路上における媒介組織、すなわち地域統括会社に着目し、海外子会社の吸収能力に、地域統括会社の知識移転活動はどのように影響しているのかについて探索することにした。具体的には、当該年度は、当初の研究計画にあったように定量調査を行うのではなく、グラウンデッド・セオリー・アプローチに基づき、海外子会社の吸収能力に影響を与える、地域統括会社の要因とは何かを明らかにすることにした。そこで、本年度は、日系多国籍企業の海外子会社および地域統括拠点において聞取り調査を実施した。これらは年度末に実施した為、その結果は現在分析中であるが、一つ挙げられる示唆とは、実際の多国籍企業の海外拠点において、特に本社から地理的な距離のある欧州においては、地域統括拠点が持つ権限が多く、そのことが、海外子会社における吸収能力に何らかの影響を及ぼしている、ということである。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
交付申請書においては、多国籍企業が関わる移転経路は多様であるので、その研究対象もより多様である必要性、さらには、多国籍企業の本社国籍数を増やして調査する必要性を説明した上で、より多くの移転経路とより多くの本社国籍数を対象とした研究を実施する、と表明した。しかしながら、研究代表者がこれまで取り組んできた移転経路である、「本社から海外子会社」への知識移転経路においては、媒介組織である地域統括拠点が存在すること、また、地域統括拠点が知識の受け手である海外子会社に与える影響が研究代表者の研究および他者から指摘されたことから、媒介組織が知識の受け手の組織の吸収能力に与える影響に取り組む必要性に迫られ、さらには当該年度の研究方法も変更した。したがって、進捗状況が、より多くの移転経路を対象とする、とした当初の交付申請書通りに進んでいると言い切ることは出来ない。ただし、地域統括拠点が入った移転経路を対象とすることは、多様な移転経路を対象とする、ということでもあるので、必ずしもその研究に取り組んでいないわけでもないので、おおむね順調に進展している、と自己評価する。
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Strategy for Future Research Activity |
平成23年度においては、東日本大震災の影響で交付額の減額変更の可能性があったことから、その可能性を見込んで、夏季休暇中に実施予定であった研究調査を見送るに至り、過去に行った調査の再度の分析、また文献渉猟に当てた。平成24年度においては、前年度に実施できなかった分も含め、媒介組織である地域統括拠点が関わる知識移転のうち、当初から取り組んでいる本社から海外子会社への移転経路について、地域統括拠点および海外子会社を対象とした聞き取り調査を複数企業を対象として複数回実施する。また、より多くの国籍の企業を対象とするという当初の目的に沿う為、とりわけ研究協力者の協力可能性の状況に応じて、より多くの国籍の企業の本社、地域統括拠点あるいは海外子会社において聞き取り調査を実施する。なお、これらの調査に際しては、より多くの移転経路を対象とするという当初の目的に沿う為、例えば、海外子会社同士の移転等、可能であれば他の移転経路も調査対象とする。ある程度のサンプル数が集まったところで、仮説設定の為のデータ分析を実施する。また、研究最終年度である平成25年度には、その設定された仮説を用いて定量調査を実施する。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
(1)旅費:聞き取り調査を実施するにあたって必要である。特に、研究代表者が実施する、日系企業の地域統括拠点および海外子会社を対象とした調査においては必要である。なお、研究代表者が、海外企業の地域統括拠点および海外子会社を対象とした調査をする場合は、そのいずれかが日本に所在することを前提とする。また、平成23年度の調査研究成果を学会で報告する為の旅費にも充当する。(2)人件費および謝金:聞き取り調査の内容をデータ解析するにあたって知識を持つ研究者からの指導あるいは協力が必要となる。また、海外企業を対象とした調査を行う際は、研究協力者の協力可能性の状況に応じて、謝金を支出する。(3)物品費:グラウンデッド・セオリー・アプローチに基づいたデータ分析作業を行う際に必要となる専用のソフトウェア(Atlas.ti等)を購入する必要があるので、物品費を充当する。
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Research Products
(2 results)