2012 Fiscal Year Research-status Report
次世代燃料車の市場興隆期における自動車産業の企業間取引関係
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23730388
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Research Institution | Nagoya Gakuin University |
Principal Investigator |
佐伯 靖雄 名古屋学院大学, 商学部, 講師 (60580389)
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Keywords | 自動車産業 / サプライヤー・システム |
Research Abstract |
当該年度の研究成果(投稿中含む)は次の通りである。 ①佐伯靖雄[2013],「サプライ・チェーンのリスクマネジメントと企業間の協調的行動の限界:東日本大震災後のルネサスエレクトロニクス復旧プロセスを事例に」『産業学会研究年報』第18号掲載予定(2013年6月刊行) ②佐伯靖雄・朴泰勲[2012],「ドイツ自動車産業における完成車工場と日系サプライヤーの組織間協業」『経営経済』大阪経済大学中小企業・経営研究所,第48号, pp.33-50. 研究目的である,次世代燃料車(ハイブリッド車[以下HV]・電気自動車[以下EV])の普及がもたらす自動車産業への影響に着目し,とりわけ日本企業の垂直統合型の企業間取引関係(サプライヤー・システム)がいかに変容し初めているのか,そして競争力は維持されるのかという課題に対し,国内外の産業構造分析を進めた。明らかになってきたことは,自動車の電動化・電子化によって基幹部品の調達構造には変化が見られるようになってきたということである。具体的には,制御部品に実装される半導体の調達先がグローバル寡占化によって限定的になってきており,それゆえ東日本大震災のような未曾有の災害時に世界規模で調達機能が麻痺するという傾向が明確になった。また海外に目を向けると,こういった特定の部品に拘わらず,ティア1サプライヤーを集約したティア0.5サプライヤーとでも呼ぶべきシステム部品サプライヤーが調達上大きな役割を果たしていることが明らかになった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
当該年度の研究進展は著しく,研究計画以上の進展があった。2008年秋の米国発金融危機に端を発した世界的景気後退を受け,各国政府が景気浮揚のために一斉に環境対応次世代燃料車への購入補助金やそれに類する助成といった政策を提示したことで,HEVやEVといった次世代燃料車が俄に注目を集めるようになってきた。特にEVは,動力源を完全に電気に移行するという点で注目を集めており,2010年から2011年頃の報道は過熱する一方であった。なかには,EVの本格普及により,GMやトヨタのような20世紀に産業を牽引した巨大企業は消滅し,群小の自動車メーカーがひしめく「スモール・ハンドレッド」の時代が来るといった主張もあったが,申請者は一貫してその可能性を否定してきた。なぜなら,自動車という製品は約2~3万点の部品を集成したものであり,総合組立産業としてさまざまな企業群の取引連鎖を前提として成り立つものだからである。このような産業構造上の特性により,技術的・資本的に圧倒的存在であるセットメーカー(完成車メーカー)と,それに準ずる大手サプライヤーがピラミッド的に取引構造を管理することで,現代の大規模量産体制は確立している。いきなり群小のベンチャーがこれを代替することは産業構造上不可能である。しかしながら,スモール・ハンドレッドの議論が示唆するように,ある特定の分野で産業構造の変化が見られるようになったことは事実である。それが当該年度の研究で明らかにしてきた,半導体のような特殊部品の例外性,あるいは欧州のシステム・サプライヤーの台頭である。
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Strategy for Future Research Activity |
引き続き実証的視点から研究を継続し,これまでの研究成果の裏付けとなるような一次データの収集に努める。また,それらの分析成果を反映し,学会報告,論文執筆へと繋げる。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
前年度までに訪問できなかった一次サプライヤー,そしてさらにその取引先である二次,三次サプライヤーの実態調査を中心に行う。研究成果は,前年度までの経過報告と併せて整理・分析し,産業学会全国研究会,産業学会自動車産業研究部会等で報告し,同時にこれらの学会誌(『産業学会研究年報』)ないし所属研究機関の紀要等に論文を投稿する。
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