2011 Fiscal Year Research-status Report
引退期にあるトップ・アスリートの内的キャリア形成と支援の方法に関する研究
Project/Area Number |
23730392
|
Research Institution | Kinki University |
Principal Investigator |
小川 千里 近畿大学, 経営学部, 准教授 (90340760)
|
Project Period (FY) |
2011-04-28 – 2014-03-31
|
Keywords | アスリート / 引退 / キャリア / 支援 / 教育カウンセリング / キャリア・カウンセリング / SGE / TAE |
Research Abstract |
年度の当初、文献の検討、分析モデルの洗練、初期分析と事例の選定、ならびにインタビューを計画し、ほぼ計画通り実行した。文献検討では、キャリア・カウンセリングと教育カウンセリングの分野において、国内で公表されている教育実践計画の立案に関するものの大部分を把握できた。また、分析が進んだ研究成果については随時公表を実施し、「元プロ野球選手と元Jリーガーの引退とキャリア支援あり方」について、平成23年度の国際学会(ECP2011)で公表した。さらに、引退期にある大学生アスリートの行動特性について把握できた内容についても発表した(JECA2011)。文献検討を経て本課題に適応可能性を検討する必要のあったいくつかの手法について、引退期にある大学生を対象にパイロット調査を実施し、初期分析の結果を公表した(ASPASP2011)。以上の活動は、我が国における引退期のアスリートに対する支援の方法について、本課題の社会的重要性、研究進度を示す意義があったと認識している。本年度研究開始当初、支援の具体的手法について、多くの元アスリートによる情報提供を受けることが望ましいといと考えていた。しかし、元プロスポーツ選手の引退期の支援の実践者へのインタビューを経て、今年度の初期分析の結果に基づく認識がおおむね現象を把握できており、それを一般的に、国内外の両方で理解しやすい形式で言語化することのほうが重要であるとの認識を得た。よって、以降は教育カウンセリング(SGE、キャリアSGE、リーダー研修、不登校対応)、臨床心理学(TAE)から専門知識の提供を受けた。以上のことから、カウンセリング心理学と教育計画の立案の知識に基づく支援方法の開発に向け、今年度必要とした知識を獲得することができた。そして、研究対象についての今後のアプローチ、支援方法の実施と有効性の検討について、重要な視点が得られた。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
今年度開始当初の目的に則って研究を進行し、初期分析による研究成果公表も良好である。競技経験のある引退期にある情報提供者に対するインタビュー調査により、今年度前半までの初期分析の結果が、本研究が対象としている引退期にあるアスリートの現状をおおむね把握できている状態にあることが分かった。よって、今年度はキャリア支援の方法の研究が盛んな隣接分野においてもインタビューや具体的なツールの提供による専門的知識の提供を受ける段階まで至った。さらに、研究対象の状況を適切に説明できるような言語化を臨床心理学から発展した質的研究方法の一つであるTAEにより既に進めることができた。この点も、年度開始当初には意図していなかったが、学術的に質が高く説得力のある研究結果の公表という意味においては、手法として厳密に検討がおこなわれてきたという裏付けのある方法により、分析の実施と内容の構成が本研究でできていると確信しているところである。また、来年度に行いたい成果公表も主要な案件については内容を決定し、すでに準備を進めている。よって、研究成果の公表も順調であり、今年度のインタビュー調査からは、当初予定していたよりも豊富で貴重な情報を獲得でき、分析が進められていると認識している。
|
Strategy for Future Research Activity |
今年度実施したインタビュー調査による情報に基づいて、「引退期のアスリートの状況に対する認識を深めるための言語化」と「具体的支援の開発」を進める。アスリートの状況に対する言語化については、質的心理学の分野の分析アプローチの一つであるTAEによる初期分析がすでに終了しており、今後も分析を進めながら国内外で成果を公表する。また、支援方法の開発については、継続的な情報収集を行いながら進める。情報収集では、前年度に得た情報について不足を補う。具体的には、一つは教育カウンセリングの分野におけるSGEの方法で、専門情報獲得が実現しなかった実践的方法(たとえばキャリアに特化したエクササイズとその実践の際の具体的な方法)に関する情報収集である。もう一つは、TAEのアプローチをデータの分析方法として用いるだけではなく、これを「具体的支援の方法そのもの」として開発するアプローチの本研究への応用のための情報収集である。さらに、上記以外の関連する方法、特に国外の情報については可能な限り、随時情報収集していきたいと考えている。特に支援の方法の開発にあたっては、引退期のアスリートにしばしばみられる特徴の言語化とともに、方法の表記や分類、手順等について構成を行いたい。そして、本研究で開発された方法について、実施の協力に内諾を得ている引退期のアスリートに対する実践を行い、その効果について検討する。開発している方法の有効性は、インタビューや質問票調査等で随時確認していく。
|
Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
「引退期のアスリートの状況に対する認識を深めるための言語化」については、キャリア発達や発達心理学で議論されている一般的なモデルとの違いを確認して初期分析を進め、その結果をまとめている。次年度はこの内容を国内外で成果公表できるよう準備を進めている。よって学会参加のための旅費、その他の経費(学会参加費等)を計上している。さらに、「具体的支援方法の開発」のために、教育カウンセリング分野、臨床心理学や質的心理学分野などの隣接分野において、前年度の不足を補うような専門知識の情報収集を行う。そして、国外での研究の動向の確認や支援方法の効果を検討するためのインタビュー調査や質問票調査を行う。これに当たり、専門的情報提供を受けるため謝金に経費を計上している。また、収集された情報や分析中のデータ、結果を保存するために、消耗品(メモリ等)の購入を予定しており、物品費の執行を予定している。
|
Research Products
(3 results)