2012 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
23730405
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Research Institution | Keio University |
Principal Investigator |
小野 晃典 慶應義塾大学, 商学部, 教授 (20296742)
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Keywords | マスカスタマイゼーション / 成分ブランディング |
Research Abstract |
顧客ニーズに合わせて製品をカスタマイズするサービスを競合各社が導入すると、各社がブランドとして保有する個性が失われてしまう。このとき、製品に代わるブランディング対象として重要性を帯びるのが「成分(つまり部品や原材料)」である。完製品メーカーたちは、顧客がそれを組み立てたいと思うような優れた成分を、競合他社より優位に取り揃えようとするということである。 この現象に関して、本事業は、マスカスタマイゼーションの主体である完製品メーカーが元々、競合メーカーに比べて競争優位を持っているか否かということと、完成品メーカーが成分ブランディングを行う対象となる成分のサプライヤー(供給業者)が、競合サプライヤーに比べて競争優位を持っているか否かということの2つを焦点として研究を展開した。後者に関連して、ブランド力の高い成分ほど、それを選択肢として含有するマスカスタマイゼーションを実施する完製品のブランド力向上への貢献度も高い、という関係が既存研究から想起されるわけであるが、本研究は、前者の変数を組み合わせて実施した企業調査を実施して以下のような新しい知見を得た。 すなわち、第一に、すでに高いブランド力を有する完製品は、高いブランド力を持つ成分を採用しても、ブランド力向上を見込めないこと、および、第二に、自身のブランド力と同程度のブランド力を有する成分を採用することが、完製品にとって最適であり、より脆弱な成分を採用しても、自身のブランド力向上に貢献しないのと同様に、逆に、強力な成分を採用しても、自身のブランド力向上に貢献しないということである。 製品個性化を目論んでカスタマイゼーション・サービスを各社が導入すると、かえって企業は没個性化するであろうという主張は、世界的にみても新しい主張である。新年度からの基盤研究(C)では、成分ブランディング以外にも目を向け、拡張的研究を展開する予定である。
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