2012 Fiscal Year Research-status Report
小売業態イノベーションにおける小売サービスと組織能力の研究
Project/Area Number |
23730410
|
Research Institution | Chuo University |
Principal Investigator |
久保 知一 中央大学, 商学部, 准教授 (40376843)
|
Keywords | 小売業態 / 品揃え形成 / 組織能力 |
Research Abstract |
今年度は主に2つの成果が得られた。第1に、パネルデータを用いて、日本企業の企業成果と組織能力の関連の実証分析を行い、国際学会(Western Economic Association International) にて学会発表を行った。マーケティング戦略に関わる組織能力 (organizational capabilities) として、マーケティング行動そのものの強さに基づく組織能力と、市場志向と呼ばれる環境変化への対応の素早さに基づく組織能力の2つを識別し、企業成果との関連を分析した。さらに、この関連は企業が所属する産業の競争度によって変化するものと考え、競争度を分類変数とする多母集団構造方程式モデルによって分析した。製品力はどのような競争度でも有意であったが、競争的産業では顧客志向が、非競争的産業では反応速度が有意であることが示された。第2に、共同研究の成果として、フランチャイズ・システムを用いてチェーンストア・オペレーションを展開する小売業者について、フランチャイザーとフランチャイジーの間での意思決定権の配分についての実証分析を行い、国際学会(2012 Global Marketing Conference)にて学会発表を行った。一方、進行中の作業は2つある。第1に、企業ヒアリングを進める中で、小売企業内の品揃え形成メカニズムの違いが、小売店頭の品揃えに及ぼす効果の存在が分かるようになってきた。第2に、小売企業の業態別データセットの作成に取り組んでいる。小売業態を表現する2つの軸(回転率と売上高営業利益率)に各社および業態をプロットすることで、時系列的に日本の小売産業の盛衰を捉えることができるようになった。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
企業ヒアリングが進んでいることと、小売企業のデータセットの作成が進んでいること、一方で消費者調査については準備中であることを踏まえて、おおむね順調と判断した。
|
Strategy for Future Research Activity |
研究を進める中で、我が国における小売業態進化に関する研究は、マーケティング史の把握に基づく個別事例研究が多く蓄積されてきたものの、時系列的に大量サンプルを補足して、業態の盛衰を明らかにする研究は数少なく、この点にこの研究課題のオリジナリティがあることが分かってきた。したがって、作成中の二次データに基づく小売企業データセットの整備をさらに進め、実証分析につなげていくことが重要である。
|
Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
小売企業のデータセット作成は現在なおも進行中であり、これには手入力のマンパワーが必要であることから、人件費を多めに見積もった。消費者へのアンケート調査のための調査費用(ウェブ調査業者を利用予定)にも多めに配分する予定である。
|
Research Products
(3 results)