2011 Fiscal Year Research-status Report
インタラクティブ・コミュニケーション評価のための知覚相互作用性尺度の開発
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23730414
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Research Institution | Chiba University of Commerce |
Principal Investigator |
松本 大吾 千葉商科大学, サービス創造学部, 講師 (60434271)
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Project Period (FY) |
2011-04-28 – 2014-03-31
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Keywords | 商学 / マーケティング / 広告 / インターネット / interactivity |
Research Abstract |
「企業と消費者との関係構築」を構築する上で重要なインタラクティブ・コミュニケーションの本質である、相互作用性を捉えるため「知覚相互作用性(Perceived Interactivity、以下PI)」概念に注目する。本研究ではJohnson et al.(2006)のPI尺度を議論の基盤とする。既存研究において最も抽象度が高いと考えるからだ。しかし、Johnsonらの尺度が頑健性を持っているかは疑問である。こうした問題意識から、本年度はJohnsonらによるPI尺度の再検討に取り組んだ。具体的には、知覚相互作用性概念に関する既存研究の収集と整理を行った。特に、知覚相互作用性概念の構成次元に注目した。広告・マーケティング研究を軸に、コミュニケーション研究や情報通信関連の研究を含め、幅広くレビューを行った。その成果の一部を、日本産業広告協会発行の『産業広告』2011年8月号に「インタラクティブ・コミュニケーションの捉え方―企業ウェブサイトの評価指標としての知覚相互作用性尺度―」としてまとめた。また、本研究の基盤としているJohnsonらの論文についても翻訳し、2012年1月、早稲田大学産業経営研究所『ダイレクト・マーケティング研究―海外ジャーナル抄訳集No.6―』に掲載された。加えて、マーケティング・コミュニケーション研究及びインタラクティブ・コミュニケーション研究の基盤を成すコミュニケーション学の文献も概観した。特に、構成概念妥当性に関する知見、測定尺度開発に向けた研究アプローチ、研究方法を確認した。先行研究レビューは研究上の基礎となるため、初年度に行った意義は大きい。また、本研究の基盤を成すJohnsonらの研究を深く理解する上で、全文の翻訳は重要な作業だった。2年目以降はデータを収集し尺度開発を行うが、その方法論を確認することは研究代表者にとって重要なプロセスだった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
本研究はより信頼性と妥当性の高いPI尺度の開発に取り組む。具体的には本研究の基盤を成すJohnsonらの尺度を再検討し、日本版PI尺度を開発する。また、PI尺度の開発にあたって、法則的妥当性を確認する。加えて、PI尺度の一般化に向けて、媒体横断的な検討も行いたい。広告研究では媒体特性に注目して、その影響の違いを検討する研究が多く、検討に値する。これらの課題以下の4つにまとめられる。(1)Johnson et al.(2006)のPI尺度の再検討(PIの多次元構造の再検討と安定性の確認)、(2)日本版PI尺度の開発(日本におけるウェブサイトの新たな評価基準の作成)、(3)PI尺度の成果の検討(法則的妥当性の確認、ウェブサイトとブランド態度との関係を検討)、(4)PI尺度の汎用性の検討(媒体ごとに尺度をどのように修正する必要があるかを検討)本年度は特に課題(1)に取り組んだ。PI尺度に関する主要論文の収集を終え、内容検討についても達成できた。JohnsonらのPI尺度の再検討を行う上で深く理解する必要があったため、全文の翻訳も行った。ただし、本年度中に日本版PI尺度の下案作成には至らなかった。具体的には、主要なPI尺度の次元及び各次元を構成する質問項目を洗い出す作業は終了しているものの、それらをJohnsonらの尺度と比較、検討するに至らなかった。作業遅滞の原因は研究上の問題ではなく、研究代表者の異動による。研究代表者は2011年9月に早稲田大学から千葉商科大学に異動した。そのため、研究室の引っ越し、異動に伴う各種手続きを行う必要が生じた。これは研究開始時には予測できなかった事態であり、そのことが当初のスケジュールに影響を及ぼした。とはいえ、既述のとおり研究上の問題はなく、遅れた作業も2年目に十分に実施可能な範囲であるため、研究の価値を損なう問題ではない。
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Strategy for Future Research Activity |
次年度は、Johnsonらの尺度を再検討し、日本版PI尺度を開発する。換言すれば、上述の課題(2)と課題(3)に取り組む。具体的には、主要なPI尺度の次元及び各次元を構成する質問項目をJohnsonらの尺度と比較、検討を行う。そして、日本版PI尺度の下案を作成する。その後、経験的に検証を行う。検証方法はJohnson et al.(2006)を参考に行う。調査素材はJohnsonらと同様に架空の製品ブランドのウェブサイトを用いる。なお、Johnsonらは製品カテゴリとしてワインを選択していたが、本研究ではPI尺度の修正プロセスを踏まえ、どの製品カテゴリを選択するか決定したい。本研究では、実際に検証用ウェブサイトを体験してもらう必要がある。したがって、調査手法としてはCLT(Central Location Test)を用いる。CLTとは、会場に調査対象者を集め、その場で質問票に回答してもらう手法である。検証用ウェブサイトの体験時間は調査対象者の負担を踏まえ10分~15分程度を考えている。一般性を高めるため幅広い年代を対象にする。サンプルは20代~40代の男女、計150サンプルを予定している。以上の調査で得たデータについて分析を行う。分析手順は、(1)修正PI尺度の全質問項目の天井効果とフロア効果の確認、(2)修正PI尺度の各次元の内的整合性の確認(クロンバックのα係数)、(3)修正PI尺度の各次元の収束妥当性と弁別妥当性の確認(確認的因子分析)、(4)修正PI尺度の法則的妥当性の確認(構造方程式モデリングによる因果モデルの検証)の4段階に分けて行う。なお、以上の分析には統計ソフトSPSS statisticsとAmosを用いる。(4)の法則的妥当性の検証ではPIの成果指標を設定する必要がある。前年度のPI研究のレビューを通じて決定する。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
本研究では、実際にウェブサイトを閲覧してもらい、その閲覧経験に関してアンケート調査を行う。そのためには、PCの性能や操作性、ウェブサイトの閲覧時間を統制し、調査協力者を同じ環境で調査することが望ましい。したがって、会場を借りて、その会場に調査協力者を集めて調査を行う手法であるCLT(Central Location Test)を用いたいと考えている。具体的な金額の見積もりは、複数のリサーチ会社に対してヒアリングをし、計上する。また、調査素材としてウェブサイトを制作する必要がある。具体的な金額の見積もりは、複数のウェブサイト制作会社に対してヒアリングをし、計上する。次年度はデータの収集と分析が主な作業になるが、既存研究のレビューは継続的に行う。また、可能な限り精緻な分析を行うためには妥当性の検討、統計手法の検討も継続的に行う必要がある。従って、文献購入や印刷にもある程度の費用を使用する予定である。そのほか、研究成果の発表のための学会参加費、論文投稿に関わる費用なども計上する予定である。
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