2012 Fiscal Year Annual Research Report
フレキシブルな基準の導入に対する監査人の判断過程―欧州各国の対応を例として
Project/Area Number |
23730425
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Research Institution | Tohoku University |
Principal Investigator |
猪熊 浩子 東北大学, 経済学研究科(研究院), 准教授 (30596416)
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Keywords | IFRS / 監査判断 / 原則主義 / 詳細主義 / 欧州 |
Research Abstract |
本研究では、細則主義(rule-based)に基づく会計基準から原則主義(principle-based)に基づく会計基準に変化したときに、監査人はどのように対応するのかという問題を取り上げ、そもそも原則主義の下で監査人はどのような行動をとるのかを検討した。そこから監査人は原則主義における裁量の範囲の拡大と責任の拡大に対応するために、他に参照できる会計基準や監査法人が独自に定めるルール、あるいは共有された解釈のような何らかの具体的な基準(standard in use)に依拠して行動しようとするという見方を提示した。 そして、このような見方に基づいて、原則主義の下での監査人の行動や同じ原則主義の会計基準の変化に対する監査人の対応、そしてそれを踏まえて細則主義から原則主義への変化における監査人の対応について実証的に分析した。すなわち、原則主義の下で監査人が何らかの具体的な基準に依拠して監査を行っているとするならば、そのような具体的な基準を整備していればいるほど、監査における判断のばらつきが小さくなるはずである。一方で、原則主義の下で会計基準が変更された場合には、そのような実際に利用している基準(standard in use)が利用できなくなるため、原則に基づいて監査人が個別に判断することになり、判断のばらつきが拡大することになる。 本研究で得られた結論としては、まず原則主義の下での監査人の行動を検討し、監査人が実際には何らかの基準に依拠して行動することを実証分析により示した点である。次に、IFRSの導入により監査人の裁量が拡大し、監査人にとっての大きな負担になるという見方に対して、実際には監査人は何らかの基準に依拠するために、IFRSの導入によっても、監査人が実際にその裁量を行使するわけではなく、基準を設定することでその責任を回避しようとすることを示したことである。
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Research Products
(7 results)