2011 Fiscal Year Research-status Report
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23730428
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Research Institution | Hitotsubashi University |
Principal Investigator |
野間 幹晴 一橋大学, 大学院国際企業戦略研究科, 准教授 (80347286)
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Project Period (FY) |
2011-04-28 – 2014-03-31
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Keywords | 経営者予想 / アナリスト予想 / 予測精度 / 価値関連性 / 資本剰余金からの配当 |
Research Abstract |
平成23年度は、次の3つの研究を行った。 第1に、経営者予想の修正回数と研究開発(R&D)投資の関連について実証分析を行った。分析の結果、上方修正の回数が多いほどR&D投資に対して消極的になり、下方修正の回数が多いほどR&D投資に対して積極的になることが確認された。この分析結果は、近視眼的行動を支持する。 第2に、資本剰余金を原資とした配当の決定要因を明らかにした。また資本剰余金から配当を払う企業は、そもそも利益剰余金や売上高当期純利益率がマイナスであることがわかった。すなわち、資本剰余金を原資として配当を行う企業は、利益剰余金が小さいほど、資本剰余金から配当を行うことが確認された。平成13年6月改正商法によって資本準備金の減少制度が設けられ、資本剰余金からの配当が認められなければ、業績が悪く利益剰余金がマイナスであるため、株主に配当を払うことができなかったと考えられる。つまり、利益剰余金がマイナスであるにもかかわらず、資本剰余金を原資としてまで配当を支払っているのである。 第3に、経営者予想とアナリスト予想の予想精度および価値関連性を企業規模別に調査を行った。分析から、期初の経営者予想とアナリスト予想の比較においては、全サンプルでは経営者予想のほうがアナリスト予想より予想精度が高い傾向があることが明らかになった。また企業規模別には、小規模企業はアナリスト予想よりも経営者予想のほうが予想精度は高い一方、大規模企業では経営者予想とアナリスト予想に有意な差がないこともわかった。次に、企業規模別に経営者予想とアナリスト予想の価値関連性の分析を行った。これによると、小規模企業では経営者予想の価値関連性が高く、大規模企業ではアナリスト予想の価値関連性が高いことが確認された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
おおむね順調に進展しているのは、本課題の目的である日本企業の経営者の近視眼的行動、および株主に配当を支払うことを重視する論理を明らかにすることができたためである。 前者については経営者予想の修正回数の観点から分析し、後者については資本剰余金を取り崩して配当を払う論理を分析した。
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Strategy for Future Research Activity |
今後は次の2つの分析を中心に行う予定である。 第1に、日本企業の社長交代、および任期の短さが経営者の近視眼的行動に与える影響について実証分析を行う。 第2に、赤字企業が株主に配当を支払う論理とその経済的帰結について実証分析を行う。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
平成24年度は経営者の交代の前後をめぐる研究開発(R&D)活動の変化について実証分析を行う。この実証研究のためには、経営者の任期に関するデータベースを手入力で作成する必要があるので、人件費・謝金として30万円ほど利用する計画である。 またアメリカ会計学会でも発表を行うので、そのために旅費として60万円を計上する。 Korea University と KAIST が実施するセミナーでの研究発表が、先方の都合でキャンセルとなり、その旅費分等が未使用となったが、最新の統計ソフトウェアの購入に充て、有効に使用する予定である。
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Research Products
(3 results)