2012 Fiscal Year Research-status Report
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23730428
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Research Institution | Hitotsubashi University |
Principal Investigator |
野間 幹晴 一橋大学, 大学院国際企業戦略研究科, 准教授 (80347286)
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Keywords | 経営者予想 / 非開示企業 / 配当政策 / 赤字企業 / コーポレートガバナンス / アナリスト数 / アナリスト予想 |
Research Abstract |
2012年度は主に次の2つの研究実績があった。 第1に、日本企業が近視眼的行動に陥り、競争力を回復できない1つの論理として、配当を払う企業が多いことをあげることができるが、赤字企業の配当政策を実証研究した。特に、赤字企業が株主に配当を支払う論理をコーポレート・ガバナンスの観点から解明することを試みた。分析の結果、赤字企業に限定すると、経営者と外国人、その他法人による株式所有が多いほど、配当を支払う可能性が高いことを確認した。さらに、全サンプルを対象として、交差項を用いた分析を行った結果、赤字企業の場合は経営者の株式所有が多いほど、配当を支払う可能性が高くなることを示唆する実証結果が得られた。こうした結果は、赤字企業が配当を払うのはガバナンスが密接に関連していることが確認された。 第2に、近視眼的行動の1つの要因として挙げられる業績予想の開示制度をめぐる実証研究を行った。2010年6月に閣議決定された「新成長戦略」では、金融戦略の一環として「取引所における業績予想開示のあり方の検討」が掲げられた。これを契機に日本証券経済研究所において業績予想の今日的意義と問題点について議論が行われ、2012年3月には同研究所の答申を受けて東京証券取引所(以下、東証)が業績予想開示の柔軟化を含む決算短信ガイドラインを公表した。これにより2012年度から業績予想開示は柔軟化され、企業の状況に応じた業績予想の開示を行うことが可能になった。2012年度から始まった業績予想開示の柔軟化に伴い、2012年度の業績予想を非開示にしている企業の特徴を分析した結果、非開示企業は開示企業に比べ業績や財務内容が劣ること、ディスクロージャーが全般的に悪化していること、非開示企業は開示企業に比べ業績や財務内容が劣ること、などを明らかにした。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
おおむね順調に進展していると考える理由は、次の3つである。 第1に、日本企業が近視眼的行動に陥り、競争力を回復できない1つの論理として、配当を払う企業が多いことをあげることができるが、その論理をコーポレートガバナンスの観点から説明できているからである。 第2に、近視眼的行動の1つの要因として挙げられる業績予想の開示制度をめぐる実証研究を行い、業績予想を非開示とする企業の特徴の解明を既に行ったからである。 第3に、経営者の任期、配当政策、業績予想の非開示企業など、2013年度に利用するために必要なデータベースの構築が完成しているからである。
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Strategy for Future Research Activity |
今後については、次の2つの研究を推進することを計画している。 第1に、2012年度から業績予想開示は柔軟化され、企業の状況に応じた業績予想の開示を行うことが可能になったが、業績予想を非開示にした企業がどのような投資政策、特に設備投資や研究開発投資を行ったかを明らかにする。 第2に、米国の研究では経営者の任期が変わる時点で近視眼的行動が起きることが確認さんれているが、こうした研究を日本でも行うと同時に、経営者の任期が長い企業の方が近視眼的行動が起きにくいかどうかを検証する。 共に学会発表を行い、ジャーナルに投稿することを予定している。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
該当なし
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Research Products
(6 results)