2011 Fiscal Year Research-status Report
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23730429
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Research Institution | Shiga University |
Principal Investigator |
赤塚 尚之 滋賀大学, 経済学部, 准教授 (30386536)
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Project Period (FY) |
2011-04-28 – 2014-03-31
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Keywords | 非金融負債 |
Research Abstract |
(1)負債の範囲に関する研究 まず、FASBによる資産除去債務の範囲を限定する取扱いをもとに,負債の範囲を限定する論理の解明を試みた。FASBの結論は,比較可能性を維持することを目的とした一般的な論理を先行適用したものであるというのが,検討によって得られた見解である。当該論理を適用すれば,少なくとも基準レベルにおいて一律に負債の範囲が限定される。これは,会計情報の質的特性として実質優先を放棄し,画一的な比較可能性を追求することを意味する。もっとも,そのことが会計情報の有用性に資するかについては,実際に確かめる必要がある。そこで,情報利用者にとって法的債務以外の債務を源泉とした項目は,(1)意思決定に重要ではないか,(2)意思決定に重要であるものの,注記または財務諸表外の情報から当該項目を事実上の負債として意思決定に織り込む能力を有し,財務諸表本体に反映する必要はないとみなしているはずであるという情報利用者に関する想定を,実証すべき仮説として提示することとした。(2)負債測定における信用リスクの取扱いに関する研究 次に,公正価値測定を行うことを前提として,負債の公正価値測定に際して自己の信用リスクを反映すべきかということについて検討を行った。制度上,信用リスクについては,負債の移転前後で信用状況が同一であるという仮定を置くことにより,対価がなく出口価格を採用する項目についても信用リスクを反映することが可能となっている。もっとも,信用リスクの取扱いに関する慎重論と積極論を照らし合わせてみると,信用リスクを反映すべき状況と反映すべきではない状況が混在していることが窺える。そこで,信用リスクを反映すべき状況を明らかにし,資産除去債務がそのような条件を充足するか検証を行った。その結果,資産除去債務については,本来,信用リスクを反映すべきではないという結論に至った。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
まず、本来ならば、負債概念の変遷について歴史的な検討を行い、その後、非金融負債の認識、測定へと順を追って検討を行うことを予定していたが、それらを後回しにして現在議論となっている負債の範囲と信用リスクの取扱いに焦点を当て、インプットに多くの時間を費やしたことが、研究(アウトプット)の遅れを生じさせた原因となっている。 もちろん、最初に研究の全体像を明らかにし、論点を整理する論考を公表することができており、その遅れを取り戻すことは可能であると考えている。
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Strategy for Future Research Activity |
まず、本年度の研究成果については、ワーキングペーパー等において公表しており、それを論文として公表する作業を行う。その過程において、学会報告を行う。 次に、負債概念や認識の諸論点について、検討を行う。負債概念については、その変遷をたどり、また、現在進行中の負債の定義の改訂をめぐる動向を把握することにより、歴史的な検討の意義を探求し、最新動向を踏まえてその後の認識・測定の議論を行うことができるよう準備をすすめる。 負債概念に関する検討を踏まえて、認識要件の検討を行う。最大の論点は、非金融負債の認識に際して、高度の蓋然性を問うかという点である。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
毎年改訂されている会計基準関連の書籍(和書・洋書)の購入を優先する。それとともに、文献収集のための費用を確保する。 旅費については、科研費以外の研究費によって賄う。
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