2012 Fiscal Year Research-status Report
マテリアルフローコスト会計の実践を通じた変化プロセスの研究
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23730431
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Research Institution | J. F. Oberlin University |
Principal Investigator |
篠原 阿紀 桜美林大学, 経済・経営学系, 講師 (60582517)
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Keywords | マテリアルフローコスト会計 / 環境管理会計 / アクターネットワーク理論 |
Research Abstract |
本研究は、環境管理会計の手法であるマテリアルフローコスト会計(MFCA)の企業での実践について、アクターネットワーク理論の観点から分析することで、既存の研究から見落とされていた、MFCAの実践を支える動的な変容過程を明らかにすることを目的としている。この目的を達成するために、MFCAの実践について調査分析することが第2年度の課題であった。平成24年度は、MFCAを導入した日本企業A社の10年にわたる活動を分析した。具体的には、MFCAを導入する前のA社の状況、試験導入とその結果、MFCAの全社展開、MFCAが環境管理のツールから生産管理のツールとして位置付けられる過程、をネットワークの変化の観点から考察を行った。そこでは、MFCAによってマテリアルロスが可視化されたことで、A社において環境と経済が結びつき、それが削減の対象となることで、中期経営計画や生産革新の指標となり、A社の生産活動やひいては経営活動を支援する仕組みと連携しながら変容していった過程を明らかにしている。言い換えれば、MFCAが組織コンテクストから影響を受けるのと同時にコンテクストそのものを創造していく過程を明らかにした。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究の目的は、環境管理会計の手法であるマテリアルフローコスト会計の企業での実践について、アクターネットワーク理論の観点から分析することで、既存の研究では見落とされていた、マテリアルフローコスト会計の実践を支える動的な変容過程を明らかにすることである。調査期間の3年間の目標としては、まずアクターネットワーク理論にもとづいた分析枠組を構築し、マテリアルフローコスト会計の実践についてフィールド調査を行い、分析を行うことにある。平成24年度は、マテリアルフローコスト会計を導入したA社の約10年間にわたる活動を分析し、その計算技術の影響と変化、計算技術とそれに関係する人々との関係性の変化に焦点を当てた論文を執筆し、投稿した。また、本論文を執筆する前に国内の学会で発表し、本論文を執筆後、海外の学会での発表も行った。しかし、分析枠組であるアクターネットワーク理論については、論文内で明示的に触れることはなく、アクターネットワーク理論に関する詳細なレビューを通じた論文とはなっていない。その意味で、平成25年度では理論研究を中心に行い、アクターネットワーク理論を用いた分析枠組からのA社の分析により、その理論的意義についてより深く考察していきたいと考えている。
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Strategy for Future Research Activity |
①研究内容について:平成24年度は、マテリアルフローコスト会計を導入したA社の10年にわたる活動を分析した。具体的には、マテリアルフローコスト会計を導入する前のA社の状況、導入してどのような効果を上げたのか、効果を上げたにもかかわらず、マテリアルフローコスト会計の実施が下火になっていく状況について、計算技術の影響と変化、生産活動思想の欠如や生産活動の統一的評価指標の欠如といったA社の課題と結びつくことで組織内に浸透し、さらには変容していく過程について明らかにし、論文を執筆・投稿した。平成25年度は、このA社の事例について、アクターネットワーク理論の理論的枠組を明示的に打ち出し、アクターネットワーク理論にもとづく会計研究の意義を明確にする論文を執筆する予定である。 ②研究発表について:平成25年度は7月に神戸大学で開催される会計の国際学会での報告を予定しており、すでにエントリーし、発表許可を得ている。また、アクターネットワーク理論にもとづいた会計研究を行う意義について国内での学会で報告する予定である。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
本研究では、(1)分析枠組を構築するための文献レビューを行うための経費、(2)フィールド調査を行うための経費、(3)研究成果を国内外に発信するための経費、の大きく3つの経費を必要としている。まず、(1)については、環境会計、環境管理会計、管理会計などの会計学に関する文献だけでなく、分析枠組構築に関連して社会理論に関する文献や資料を幅広く収集する必要があるため、図書購入を行う予定である。また、(2)については、主に国内でのフィールド調査を実施するための交通費や神戸大学で開催される社会環境会計研究会に参加するための交通費として使用する予定である。(3)については、平成25年7月に神戸で開催される国際学会に参加する費用や交通費、また国内外での研究発表に関わる参加費、交通費を計上する予定である。
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Research Products
(3 results)