2012 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
23730433
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Research Institution | Nagasaki University |
Principal Investigator |
林川 美由樹 長崎大学, 経済学部, 准教授 (30452858)
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Keywords | 非財務情報 / 開示戦略 |
Research Abstract |
イノベーションやビジネスモデルのパターンと開示の関係を調査するために、同様の調査を既にイタリア中小企業(Eurotech, Zignago, Nice)を対象に実施しているカロル・バニョーリ氏(カ・フォスカリ大学)と共に日本企業のイノベーションとビジネスモデルのタイプ別調査を行った。 具体的には、東京3社(良品計画、タニタ、アドバネット)と長崎2社(九州教具、協和機電工業)のイノベーション、ビジネスモデル戦略および開示戦略についてのインタビュー調査を行った。バニョーリ氏によるイノベーションの3つのパターン、テクノロジープッシュ型、マーケットプル型、ミーニングス型の分類に従って対象企業を分類し、開示戦略については社長対して行ったインタビュー形式による意識調査で得たセンテンスから判断したところ、イタリア調査と同様に、テクノロジープッシュ型は開示量が少なく、ミーニングス型からマーケットプル型に移行するに従って開示量が増える結果になった。 本調査が示すミーニングス型からマーケットプル型の開示が、テクノロジープッシュ型に比べて開示量が多く開示スタンスがオープンなのは、機密情報などが比較的少なく、逆にユーザーとのコミュニケーションがビジネスモデルを支えるという近年の経営形態の変化が影響していると推察ができる。 マーケティング領域を中心に提唱されているサービスドミナントロジック(SDロジック)が、グッズドミナントロジック(GDロジック)に対して、ビジネスへの参加者数もその影響力も圧倒的に大きく、ユーザーが企業価値を高める1つのファクターとしてその存在意義を強めてるが、SDロジックがより説得力を増すようになった現在、開示も必然的にユーザーを巻き込むスタイルへとシフトし、企業と開示情報ユーザーとのコミュニケ―ションを促進するスタイルへと戦略的に変化する必要が生じているという見方が可能である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
共同研究者と予定通り、イノベーションとビジネスモデルのパターンが開示戦略に与える影響の日伊比較を行うための日本調査を行った。しかし、その後、日伊の中小企業実態にあまりにも多くの乖離があることから、開示戦略比較の前に中小企業政策の比較が必要であることが明らかになった。また、より深い調査のために、中小企業500社程度のリカートスケール方式によるアンケートを実施する提案がバニョーリ氏がなされたが、レスポンスバイアスの処理方法などに見解の相違がでて、調査結果分析が進展していない。その間にSDロジックによる新型ディスクロージャー論の展開をまとめる作業に従事している。
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Strategy for Future Research Activity |
日伊のケーススタディの比較は計画通りにはできなくなったが、これまでのインタビュー結果やSDロジックを用いた新しいディスクロージャー論を理想郷として提示する理論研究に従事する。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
企業レポートのセンテンス分析をどの方法で行うかを決定し、必要であればT-labから野村総研のTrueTellerへ変更するので、そのソフト購入などに充てる予定である。その他、海外の学会発表の機を得た場合には、渡航費に使用する予定である。
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