2011 Fiscal Year Research-status Report
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23730436
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Research Institution | Nagoya City University |
Principal Investigator |
高橋 二朗 名古屋市立大学, 大学院経済学研究科, 講師 (70581619)
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Project Period (FY) |
2011-04-28 – 2014-03-31
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Keywords | 会計学 / 減損会計 |
Research Abstract |
本研究は,減損会計基準の強制適用を主な分析対象として,減損会計基準がもたらした企業の会計行動の変化とそれに対する証券市場の反応を明らかにするものである。具体的な研究項目は,(1)企業が減損会計を適用する具体的な目的の解明,(2)企業の具体的な利益調整行動の変化の解明,(3)減損損失計上に対する証券市場の反応,(4)減損会計基準の導入前から強制適用に至るまでの実証結果の統一的な説明の4つである。本年度は,まず,上記のうち(4)を明らかにする準備作業として,減損会計基準導入前及び早期適用を分析対象とし,企業が固定資産の評価切下げを行う目的とそれに対する証券市場の反応について検証を行った。その結果,減損会計基準導入前は評価切下げ行動と業績悪化との関連が強かったのに対し,早期適用では利益圧縮という利益調整のインセンティブが減損会計適用の決定要因になっていることが明らかになった。また,早期適用における減損損失に対して,証券市場はポジティブに反応していた。この結果は,減損会計基準が利益調整の新たな手段として用いられるようになったが,当該利益調整を行う過程に情報価値が含まれていることを示唆している。当該成果を,ディスカッションペーパーとしてまとめており,平成24年度に査読雑誌へ投稿予定である。また,上記目的のうち(1)及び(2)を明らかにするために,減損会計基準の強制適用によって,企業が資本コスト見合いの利益を稼得することを意識した利益調整行動を行うようになったかどうかを調査した。その結果,減損会計基準導入後の資本コスト控除後の経常利益の分布について,ゼロより少しマイナスの時点で歪みが観察された。この結果は,減損会計基準導入後に企業が資本コストを意識した利益調整を行っている可能性を示唆するものであり,平成24年度に減損損失に関する証券市場の反応と合わせてより包括的な検証を行った後,成果を公表する予定である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
研究実績の概要でも述べたとおり,減損会計基準導入前,早期適用に関する分析を終え,強制適用における企業の会計行動の変化に関する一定事項を明らかにすることができている。平成23年度に実施した実証結果の一部は,平成24年度に実施される減損損失に対する証券市場の反応に関する検証と併せて包括的に分析・解釈される必要があるため,現時点では公表論文1本と研究成果が少なくなっている。この点,平成24年度に減損会計基準の強制適用に関する包括的な研究成果を公表する形で対応していく予定である。
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Strategy for Future Research Activity |
平成24年度は,減損会計基準がもたらした企業の会計行動の変化に対して証券市場がどのような反応をしたのかを明らかにする。具体的には,減損損失に追加的な株価説明力があるかどうかを調べる。伝統的な実証研究の手法に倣い,財務諸表公表日前後の短期的な株価超過収益率と減損損失計上前の利益及び減損損失の関連性を確認する。当該結果と平成23年度に明らかになった企業の会計行動の変化に関する検証を併せて,研究成果として公表する。平成25年度は,平成23・24年度の減損会計基準導入前,早期適用及び強制適用に関する研究成果を総括する。そのうえで,すべての研究成果を統一的に説明可能なモデルの構築を試みる。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
本研究の遂行にあたっては,実証研究という性質上,最新の研究動向を把握することが不可欠である。また,多方面からの批判・意見を多く取り入れて研究成果の完成度をあげるために,積極的に国内外の研究会・学会に参加・報告することも重要である。そのため,次年度は,研究会・学会に参加するための旅費として研究費を使用する予定である。また,研究成果は海外へも積極的に情報発信することに鑑み,研究成果に関する英語論文校正代としても研究費を使用する予定である。
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Research Products
(1 results)