2012 Fiscal Year Research-status Report
日本企業の配当政策が利益調整行動および株式市場に与える影響に関する実証研究
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23730437
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Research Institution | Osaka City University |
Principal Investigator |
石川 博行 大阪市立大学, 経営学研究科, 教授 (60326246)
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Keywords | 配当政策 / 残余利益モデル / 将来業績予測 / 収益性予測 / シグナリング仮説 / 法人企業統計調査 / 小規模企業 / コロボレーション効果 |
Research Abstract |
本研究の目的は、日本企業の配当政策が利益調整行動および株式市場に与える影響を実証的に解明することである。残余利益モデル(RIM)は、株式価値を評価する上で、将来の収益性予測が重要であることを教えている。投資政策は、その将来の収益性を決定する主役であることは疑う余地がない。しかし、情報の非対称性が存在するとき、配当政策も将来の収益性を追加的に予測する能力を具備する可能性がある(配当の収益性シグナリング仮説)。近年における米国の先行研究は、この仮説を否定する証拠が多いが、米国と日本では配当状況が大きく異なる。 そこで2年目は、日本でシグナリング仮説が成立するかどうか、すなわち日本企業の配当政策が将来の収益性を予測する能力を有するかどうかを、法人企業統計調査の大規模サンプルを用いて実証分析した。すでに日本の上場企業については、シグナリング仮説と整合的な実証結果が報告されているが、法人企業統計調査に収録されている非上場企業と想定される小規模企業についても、上場企業と同様の結果が得られるかどうかを確認することが2年目の研究課題である。 1984 年~2008 年の延べ147,004 個の法人企業統計調査サンプルを用いて実証分析した結果、①当期や前期の収益性水準を所与としてもなお、当期の配当水準は次期の収益性水準を追加的に予測する能力を有する、②収益性の平均回帰傾向を所与としてもなお、当期の配当変化や、利益変化と配当変化のコロボレーション変数は、次期の収益性変化を追加的に予測する能力を有するという証拠を得た。この結果は、非上場企業を多く含むと思われる小規模企業サンプルについても、上場企業とおおむね同様の結果が得られることを示している。以上の結果は、日本企業全般について、配当の収益性シグナリング仮説が成立することを強力に支持している。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
ワーキング・ペーパー1本を刊行するとともに、早稲田大学会計ワークショップの研究会(2013 年2月18 日)において「配当政策の将来業績予測能力に関する実証分析」、大阪市立大学財務会計研究会(2013年3月11日)において「Backing out methodとコロボレーション効果」というテーマで研究発表を行った。最終年度の分析を行うためのリサーチ・デザインの構築に際して、2年目の研究成果が与える貢献は大きい。以上から、研究活動はおおむね順調であると判断している。
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Strategy for Future Research Activity |
研究会で得たコメントに基づいて、すでに2年目の実証分析の精緻化を図っている。また2年目の研究成果を踏まえた上で、本研究課題のリサーチ・デザインを構築する。その後、データベースが完成次第、本研究課題の実証分析を実施する。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
最終年度に使用する予定の研究費は、初年度の実証分析を精緻化させた上で、英文ジャーナルへの投稿(翻訳費用、投稿費用)や海外での研究報告(海外旅費)への支出を予定している。なお、最新のデータに基づく証拠を提供することが実証研究において特に重要であることに鑑みて、2年目に購入したデータベースを更新するとともに、東京証券取引所等に出張して最新データを収集する。
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Research Products
(1 results)