2012 Fiscal Year Annual Research Report
国際財務報告基準へのコンバージェンス,アドプションと包括利益概念を巡る研究
Project/Area Number |
23730444
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Research Institution | Tokai University |
Principal Investigator |
松原 沙織 東海大学, 政治経済学部, 准教授 (10514961)
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Keywords | 包括利益 / 純利益 / 売却可能有価証券 / 繰延ヘッジ損益 |
Research Abstract |
今日,経済構造の変化に伴い,包括利益が業績として報告されるべきか否か様々な議論が行われている.このような背景として,特定の資産または負債を時価評価した際の評価差額の存在が挙げられる.これらの項目は包括利益あるいは純利益いずれの利益概念を前提とするかにより,その性格付けが大きく異なる. これまで包括利益概念について認識面および帰属面より包括的に検討した上で、特定項目が包括利益へ与える影響について特定の構成要素(過年度損益修正項目,為替換算調整勘定,繰延ヘッジ損益,新株予約権)に着目し検討を行ってきた.しかしながら,特定項目がいかなる事実を踏まえ時価されるのか,包括利益計上の意味を明らかにするためには,さらに包括利益へ影響を与えると考えられる個々の構成要素のパターンについて検討する必要がある. そこで,売却可能有価証券の評価差額が包括利益計算へ含められる背景について考察した.検討の結果,その背景には,金融商品それ自身独立した項目として捉まえる思考が存在することが明らかにされた.これは,金融商品の評価差額について,その保有目的に関係なく,一貫して損益計算へ含めるという思考であり,国際会計基準審議会における売却可能有価証券の評価に対する考え方と同様である.このことは,ノーべーシスアジャストメントに基づき繰延ヘッジ損益を計上する方法,すなわちヘッジという特殊な経済行為を特殊なものとみなさない思考と同様である.このような意味において売却可能有価証券の評価差額と繰延ヘッジ損益は共通性を有するといえよう. 現在,包括利益導入の背景を歴史的に考察している.具体的には,成文法を基盤とする日本と慣習法を基盤とする英国を対象に,それぞれの国の利益計算と他の法制度との関わりを明らかにし,今日における包括利益導入の意義について考察している.
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Research Products
(2 results)