2011 Fiscal Year Research-status Report
会計情報が企業の投資活動に与える影響に関するモデル分析
Project/Area Number |
23730449
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Research Institution | Nagoya University of Commerce & Business |
Principal Investigator |
石椛 義和 名古屋商科大学, 商学部, 講師 (20553142)
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Project Period (FY) |
2011-04-28 – 2013-03-31
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Keywords | 会計情報 / 資本市場 / 意見不一致 |
Research Abstract |
本研究の目的は、企業が開示する会計情報と企業の投資活動との関連性について、株式市場を対象とした数理モデルを用いて検証することである。会計情報の開示行為を通して企業の経済的パフォーマンスが悪化するような状況が生じるのは当然好ましくなく、会計情報と投資活動の関係を明確にすることは、たとえばどのような開示会計情報が有益かを考える上で重要である。 会計情報の公的開示の主要な目的は、投資家と企業の間の情報非対称性を減少させ、投資家の適正な判断を導くことである。本研究では、会計情報特有の2つの性質に注目した分析を行う。1つは、会計情報には経営者が保有する情報のすべてが反映されるわけではない、という特徴である(会計情報の質)。もう1つは、経営者が開示会計情報を調整できる、という点である(会計情報の調整)。 本年度は、特に会計情報の質に注目し研究を進めた。複数の投資家が、同じ開示会計情報を観察したとしても、その解釈が異なることが考えられる。たとえば経営者が保有する情報を詳細に開示すると、情報量が増加する一方で、投資家間の意見不一致が発生するかもしれない。会計情報の解釈が投資家によって異なることは、情報非対称性の解消という会計情報開示の目的にそぐわず、会計情報の質を落とす可能性がある。そこで、投資家間の意見不一致(difference of opinion)についての近年の研究をまとめ、公表した。 先行研究は、同じ会計情報であっても投資家によって解釈が異なることで、投資家の投資戦略や資本コストが変化することを明らかにしたものであったが、開示情報に対する経営者の意思決定は検証されていない。経営者による会計情報の調整という、本研究で注目する会計情報のもう1つの特徴を考察するため、現在モデル拡張の検討を行なっている。これは会計情報と投資活動との関連性を検証する上でベースとなる理論モデルである。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究は企業の開示する会計情報と企業行動との関連性を明らかにすることを目的としている。研究で注目する論点は順に、「会計情報の質」「企業の開示行動」「企業の投資活動」であり、本年度は会計情報に対する投資家の意見不一致という、会計情報の質に着目した研究を行った。(石椛義和,椎葉淳,2011,「会計情報に対する投資家間の意見の不一致が及ぼす影響について」,『産業経理』, Vol.71, No.2, pp.155-165.) 現在経営者の情報開示行動を導入したモデルを検証中であり、これにより会計情報と企業の開示行動との関連性を明らかにできると考えられる。本研究の目的である会計情報と投資活動との関連性を検証する上で、土台となる研究を順調に進めている。
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Strategy for Future Research Activity |
本研究では、数理モデルのを構築し均衡を導出することで、その特徴を分析する。数理モデルの均衡の導出には、パソコンの数理計算ソフトも利用して行う。分析結果は段階ごとに研究会等で発表し、会計研究者より意見を収集し理論を洗練させていく。研究成果は最終的に論文を作成し、学会・研究会での報告及び学術雑誌に投稿する予定である。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
消耗品費100千円:パソコンを使用することから、関連する消耗品を購入する。文房具などの購入を含む。設備備品費150千円:計算結果の分析においては、先行研究や参考書籍を収集し、比較検討することが必要であることから、会計学・経済学関連の書籍を購入する。旧版のパソコンソフトは更新する必要がある。旅費等250千円:学会・研究会は遠方で開催されるものも多く、旅費等の研究経費が必要となる。学会誌投稿料、英文校正費等を含む。
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