2011 Fiscal Year Research-status Report
管理会計指標の収集状況および測定方法に関する調査研究
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23730450
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Research Institution | Doshisha University |
Principal Investigator |
河合 隆治 同志社大学, 商学部, 准教授 (30368386)
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Project Period (FY) |
2011-04-28 – 2013-03-31
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Keywords | 管理会計 / 業績測定 / 非財務指標 / リスク管理 / バランスト・スコアカード |
Research Abstract |
本研究の目的は、管理会計指標で利用される財務情報および非財務情報について、さらに細かく分類をし、各種情報に関する収集状況、測定方法について明らかにすることである。本年度は、質問票調査の基礎となる管理会計指標によって測定される財務情報および非財務情報を用いた業績測定システムに関する先行研究について網羅的な文献レビューを主に実施した。 具体的には、まず、財務情報と非財務情報を併用した業績測定システムであるバランスト・スコアカードによる研究蓄積について1992年から2010年までにわが国主要会計雑誌、欧米会計主要雑誌に掲載されたバランスト・スコアカード関連論文を対象として文献分析を行った。その結果、欧米学術雑誌においては業績測定システムの利用局面に重きが置かれ、経済学や心理学に依拠して議論されていることが浮き彫りになった。この概念整理の成果の一部については、日本会計研究学会関西部会で報告し、「わが国バランスト・スコアカードに関する文献分析」という論題で査読雑誌に投稿中である。 また、業績測定指標の選択に影響を与える要因についても先行研究に基づいて概念整理を行った。先行研究から業績測定指標を選択に影響を与える要因として、(1)戦略との関連性、(2)環境特性、(3)マネジメント・コントロール特性、(4)指標の持つ特性、(5)評価に関する特性、(6)利用特性を抽出して個々に検討した。この概念整理の内容については日本会計研究学会全国大会で報告を行った。 文献渉猟の結果を受けて、上述の要因が業績測定指標の選択に影響を与えているという仮説を軸として、質問票を設計した。 加えて、本研究を基礎とした派生的な研究として、一企業ではなく組織間にまたがる財務情報および非財務情報に関する研究も進めており、この成果に関しても研究報告および論文執筆のかたちで公表することができた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当年度の実施計画は、(1)研究概念の整理、(2)仮説および分析フレームワークの設定、(3)質問票の作成までであった。 (1)研究概念の整理、(2)仮説および分析フレームワークの設定に関しては、バランスト・スコアカードを中心とした業績測定システムに関する網羅的な文献渉猟を実施し、その妥当性について学会発表を行い、参加者から有意義なフィードバックを頂いた。それ以外にも会計分野において業績測定を専門とする国内外研究者とも議論する機会を得た。その上で文献渉猟の結果の一部を論文の形でまとめることもできた。そのため、概念整理や仮説および分析フレームワークの一定の妥当性は確認され、質問票調査を行う上での基礎的な作業は完了しているといえる。 (3)質問票の作成についても、当初の計画通り、一通り完成することができた。 以上より、おおむね順調に進展していると評価した。
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Strategy for Future Research Activity |
次年度は当年度で行った管理会計指標に関する概念整理に基づいて作成した質問票を利用して、郵送質問票調査を実施する。ただし現状の質問票を企業に対して即座に送付するのではなく、質問票の質を向上するために、業績測定を専門とする国内外の研究者や実務家に対して質問票項目の構成概念の妥当性や質問票項目の理解可能性に関する意見聴取を行い、適宜改善を行っていく。 本研究に関する質問票調査は製造業に属する東証一部上場企業860社を対象として行う。近年、企業の情報管理が強化されたことや、わが国の経済状況が好調であるとはいえないことから、回収率が低くなる危惧がある。そのため、第一回目の調査で回答を得られなかった企業に対して、再度質問票を送付して回答を依頼する。 質問票は回収され次第、企業から回収された質問票データを集計し、分析する。回収された質問票は、情報漏えいを防ぐために、データ管理・データ解析のための専用パソコンを利用し、インターネットに接続しない状態で厳重に管理する。質問票に関する平均値、標準偏差、相関分析など、基礎的な記述統計量がそろい次第、回答に協力して調査報告書を送付する。 さらに分析結果の妥当性を確認するために、質問票回答企業のうち、質問票の回答の中で事後の訪問を承諾して頂いた企業のうちの何社かに対してインタビュー調査を行う。これと並行して業績測定に関する研究に携わる国内外の研究者に対して、調査結果の概要を報告するとともに、分析結果の妥当性や研究精度向上のための意見聴取を行う。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
次年度は、第一に、当年度に続いて財務情報および非財務情報の利用に関する情報収集を継続するとともに、質問票送付前の質問票項目のチェックや質問票調査後の分析結果についての妥当性を確認するための意見聴取を行う費用が必要である。つまり、業績測定システム関連書籍に関する「消耗品費」、意見聴取を実行するための「国内旅費」および「海外旅費」があげられる。 第二に、質問票の準備および質問票の送付・回収、質問票調査後の調査報告書の送付に伴う費用である。質問票の準備に当たっては、質問票送付先のリストをまず作成しなければならない。これに伴い、ダイヤモンド社刊『会社職員録』、東洋経済新報社刊『会社四季報』などリストを作成するもととなるソフトウエア、データ整理のための記憶媒体およびファイルといった「消耗品費」、データ整理作業の補助に関する「謝金」が想定される。質問票の送付・回収および調査報告書の送付に関する費用については、質問票用紙、調査報告書用紙、封筒代、宛名ラベル代といった「消耗品費」、質問票および調査報告書の発送作業の補助に対する「謝金」、質問票の発送・回収および調査報告書を発送する際に必要となる印刷費・切手代といった「その他」の経費で構成される。 第三に、質問票の分析にかかわる費用である。データ分析の際に参照する統計解析関係書籍、データ管理・データ分析用パソコン一式といった「消耗品費」が必要となる。
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