2011 Fiscal Year Research-status Report
インドネシア人看護師・介護士に関する研究―インドネシア側の視点を中心に
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23730463
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Research Institution | Hachinohe University |
Principal Investigator |
齊藤 綾美 八戸大学, 公私立大学の部局等, 講師 (70431484)
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Project Period (FY) |
2011-04-28 – 2014-03-31
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Keywords | インドネシア / 介護福祉士 / エスニシティ / 看護師 |
Research Abstract |
本研究は、EPA(経済連携協定)にもとづいて2008年から来日している、インドネシア人看護師および看護師候補者を対象として、彼らのライフヒストリー、受け入れまでの経緯と現状などを明らかにすることによって、制度上の課題をインドネシア人側の見方を中心として明らかにしようとするものである。 この目的のもと、平成23年度には、第一に、インドネシア人看護師・介護福祉士候補者およびEPA制度に関する基礎的資料と、先行研究の収集と整理を、日本およびインドネシア(大学や研究機関の図書館や新聞社等)で行った。その中で、インドネシア人看護師・介護士候補者に関する研究は、看護師・介護福祉士候補者の基本的属性などの統計的な基礎資料や関連の情報については、看護学の領域を中心としてそれなりに蓄積されてきていること、自分の研究をとりわけ質的ヒヤリングを中心に特化していく必要性が明らかになった。 第二に、インドネシア大学社会学部国際関係学科や同大学看護学部などのスタッフ、また「じゃかるた新聞」で看護師関連の記事を書いた記者等に直接会い、研究動向および調査可能性についてのディスカッションを行った。このコミュニケーションは現在もメイルを通じて随時行っている。24年度以降も協力してもらうことで合意を得ている。また、研究に関連する周辺のスタッフを紹介してもらい、ネットワークを広げた。 第三に、送り出し側でのヒヤリング(インドネシア、西ジャワ州チレボンの民間の看護学校STIKES)の学長およびフタッフに対するヒヤリングを、2011年9月に実施した。 第四に、日本(三沢市・むつ市)にいる看護師・介護福祉士候補者、およびインドネシアに既に帰国している看護師・介護福祉士候補者数名(リアウ州プカンバル)に、ヒヤリングを行った。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
最大の理由は、インドネシア人看護師・介護福祉士候補者へのアクセスが研究当初の予想以上に難しいことが調査をつうじて明らかになったからである。アクセスが困難な理由は、主に2つある。第一に2008年度に来日した看護師・介護福祉士候補者等が国家試験を受け、その結果が出始め、合格率が日本人に比べて低いことが明らかになったためである。この結果、試験結果が芳しくなかった看護師・介護福祉士候補生のなかには、試験に合格しない=「恥」と考え、アクセスしてもヒヤリングに応じない者も現れている。また、滞在期間の延長が許可されたり、まだ滞在期間が残っている候補者の少なからずが、将来に対する不安や悲観から、日本での資格取得に見切りをつけ、早期に帰国をしている。よって、ヒヤリングの約束を既に取り付けているばあいでも、インドネシアに帰国するという理由でヒヤリングの拒否に転じる者もいる。 さらに、受け入れ施設の一部では、マスコミや研究者になるべく接触させないように、部外者と看護師・介護士候補者の遮断を図っているところもある。実際、本研究のヒヤリング候補者のなかにも、そういった理由でヒヤリングを拒否する者もいた。 第二に、東日本を中心にヒヤリングを予定していたのだが、調査の中心として考えていた仙台などの東北地方では震災の影響や、寒さ(インドネシアとは異なる生活環境)による候補者の減少もあり、候補者とのアクセスが比較的困難であるからである。 とはいえ、現在、予定よりやや遅れているものの、ネットワークを西日本、そして帰国したインドネシア人にも広げ、またアクセス方法を変えることによって、徐々に研究を進めている。
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Strategy for Future Research Activity |
昨年度は候補者へのアクセスという問題があったが、アクセス方法を変えたり、インドネシアの送り出し事業関係者に接触することなどによって徐々にその課題をクリアしつつある。また、調査方法も当初予定していたフォーマルなヒヤリングだけでなく、インフォーマルなヒヤリングを交える等の工夫をしているが、今後もそうした方法を踏襲する。また、対象の選出方法としては片寄りがあるが、インドネシア人看護師・介護福祉士候補者の紹介によって、新たな対象を広げる。とはいえ、当初の予定どおり、先行研究を参考にしながら、ヒヤリングを中心に進めるという方針には変更がない。 また、予定より遅れ気味の研究状況ではあるが、今年度中に、研究成果の一時的な整理を行い、研究ノートもしくは論文として、何らかの媒体に成果を発表する予定である。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
まず、当初の研究計画にある通り、インドネシア人看護師・介護福祉士候補者に関する文献資料の収集(購入、コピーを含む)については今年度も継続して行う。また、録音時に使用する電池や媒体などを含め、物品に8万円使用する。 次に、本研究の研究費のウェイトは初年度の申請時の時点から旅費に重きを置いていたが、より旅費のウエイトが高める。というのは、「現在までの達成度」および「今後の研究の推進方策」でも記したとおり、ヒヤリングを行う候補者の対象を東日本やジャカルタに限定せず、西日本やインドネシアの候補者(元候補者を含む)に拡大しているからである。したがって、昨年度ほとんど使用しなかった、人件費・謝金(0円)、およびその他(2万円)の項目の金額を削減し、旅費に組み込む(国内旅費20万円、国外旅費70万)。なお、国内旅費については、青森県(2012年4月)、香川県・徳島県(2012年5月)でのヒヤリングで既に十数万円使用している。インドネシアでの調査については2012年8月-9月に約3週間、2013年2月頃に3週間程度滞在する予定である。なお、日本およびインドネシアのいずれにおいても、今年度のヒヤリングの対象者は看護師・介護士福祉士候補者および既に帰国済みの、元看護師・介護福祉士候補者を中心とする。ただし、インドネシア側で送り出し事業に関わる学校や役所の関係者に対しても、若干のヒヤリングを行う。
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