2012 Fiscal Year Research-status Report
女性の就業選択と性別役割意識に関する計量社会学的研究
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23730472
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Research Institution | Fukushima University |
Principal Investigator |
橋本 摂子 福島大学, 行政政策学類, 准教授 (70323813)
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Keywords | 社会階層 / 社会移動 / 性別役割意識 |
Research Abstract |
今年度は主に、若年層の性別役割分業意識の変容について、欧米を中心とする先進諸国と日本の違いに焦点を当て、パネルデータの分析結果を中心とする比較分析をおこなった。また、国内の分析では、クロスセクショナルデータからわかることとパネルデータからわかることの違いをまとめ、データの特性によるインプリケーションの差異およびその意味について考察をおこなった。 国際比較から明らかになったのは、主要各国の統計データからは、近年性別役割意識の変容は大きな変化がなく、一定の落ち着きを見せていること、日本の性別役割意識水準が長期的には賛成派の漸減傾向にあるものの、同水準のGDPをもつ先進諸国のあいだで見た場合、いまだ賛成層が非常に高い水準にあること、アジアでは特に韓国と特徴が似通っていることである。これは、1つには「男性は稼得就労、女性は家事育児」という家庭内性別分業がアジア地域における伝統的家父長制観と適合するだけでなく、男性の長時間労働を可能にする点で経済効率に寄与する面があるためと考えられる。また近年では日本の若年層にバックラッシュ(保守化傾向)が見られ、震災等による社会危機にともなう伝統的家族観の復活とともに、若年層雇用環境の緊縮化の影響が指摘される。 クロスセクショナルの集積データ分析から明らかになったのは、コホート別に見た場合、性別役割意識の個人変動は98年以降激減し、2008年以降、男女ともに保守化が生じている可能性があるということである。世代効果および年齢効果の両方が効果を持っているため、それが特定の世代にみられる傾向なのか、全世代に見られる傾向なのか、また労働市場とのかかわりを今後パネルデータから検証する必要がある。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
国際比較およびクロスセクショナルデータとパネルデータによる国内調査の比較を順調に終え、最終年度におこなうパネルデータ分析からインプリケーションを引き出すための文脈整理をおおむね形作ることができた。ただし、海外とのパネルデータによる比較および台湾やシンガポール等、アジア圏と日本の比較分析を随時補完していく必要があると考えられる。
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Strategy for Future Research Activity |
研究の最終年度として、蓄積された7年分のパネルデータを用いてこれまでの作業を論文にまとめ、成果発表をおこなう。特に本研究は個人内における性別役割意識の変容を追った国内初の分析であるため、意識変容の実態解明と長期的なトレンドの分析によるクロスセクショナルデータから蓄積された先行する研究群との接続に加え、近年の若年層の保守化傾向の内実、および若年層労働市場のインパクト、ワークライフバランスの視点を加えた政策的インプリケーションを導きたいと考えている。そのため、意識変容の階層規定要因の探索とともに、意識と現実(就業選択)のリンケージに焦点を当てた分析を進めていく。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
物品費 20万円 出張旅費 40万円 人件費(翻訳等) 10万円
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