2011 Fiscal Year Research-status Report
トランスナショナルに構築される「日比国際児」のアイデンティティとキャリア・プラン
Project/Area Number |
23730475
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Research Institution | Yokohama National University |
Principal Investigator |
小ヶ谷 千穂 横浜国立大学, 都市イノベーション研究院, 准教授 (00401688)
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Project Period (FY) |
2011-04-28 – 2014-03-31
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Keywords | 日比国際児 / キャリア・プラン / フィリピン / 国際社会学 |
Research Abstract |
日比間の人の国際移動の帰結として生まれた在比「日比国際児」のアイデンティティ構築過程の中でも、特に10代後半~20代前半の「キャリア・プランの設定」という場面に着目し、そこにおける国家・市場・市民社会、という3つのアクターと当事者との相互作用を解明することで、「日比国際児」の動態的なアイデンティティ構築を国際社会学的視角から実証的に分析することを目的とする本研究であるが、本年度は東日本大震災の影響が調査計画に影響した点もあり、当初予定していた日本国内における来日した日比国際児・若者への調査に具体的に着手することが難しくなった。そのため、関連文献調査、彼ら・彼女らの就労観についての予備的考察、および来日後の若者たちの職業選択の一つとなりうる介護分野での就労支援プログラムの調査といった活動を主として行った。 具体的には静岡県在住で小学生ないし中学生時にフィリピンより来日した若者、学生たちの体験発表および交流プログラムに参加し、必ずしも出自としては日比国際児ではないが、社会的な意味において日比双方の学校経験をもった若者たちの就労観が、本研究が対象とするトランスナショナルな日比国際児のアイデンティティ形成のプロセスと共通する点が多いことが確認された。 また、NGOが主催する被災したフィリピン女性のための就労支援プログラム(ホームヘルパー2級養成講座)の実地研修見学に参加した、「日比国際児」の母親に当たる在日フィリピン女性たちが、震災および津波被害によって失職したことに対して、NPOが日本語教育を含めた徹底したサポート体制、および 地元介護施設や訓練学校との見事な連携を見せているケースであり、本研究の対象である在比日比国際児の日本での就労を考える上での具体的な課題(適切なレベルでの日本語教育、地域との協力、コーディネーターの重要性)を発見することが可能となった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
採択直前に東日本大震災が発生したことで、研究担当者の職場で当初よりも不確定要素が増大し、それによって当初予定していたフィリピンでの調査および国内調査の実施計画を大幅に変更せざるを得なくなった(フィリピン調査は24年度、国内調査は25年度にそれぞれ繰越し予定)。調査研究実施の遅延により、研究成果発表準備にも遅延が生じ結果として当初の予定よりも研究の進捗に遅れが見えている。しかしながら、関連するプログラムの見学などの機会を得たことで、次年度以降の調査への具体的な指針が得られたため、次年度以降の活動によって研究全体の当初の目標は達成できると考える。
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Strategy for Future Research Activity |
本年度大幅に変更を余儀なくされた在比日比国際児へのインタビュー調査を平成24年6月~9月にかけて実施する。具体的な対象は、(1)支援組織に関わってきた子ども/若者(マニラ首都圏在住者を中心に)20名、(2)支援組織に関わりを持たなかった子ども/若者(地方在住者)20名とする。(1)の選定に関しては、筆者がこれまでボランティア・スタッフとして活動に携わってきた、マニラに拠点を置くNGO、DAWN(Development Action for Women Network)の協力10代後半~20代前半の子ども/若者たちについては、母親・スタッフとともに筆者との間にラポールが形成されている。DAWNからはすでに調査協力の内諾を受けている。この調査と並行して、同期間に関係機関・団体のうちフィリピンに拠点のある在マニラ日本大使館、海外フィリピン人委員会、フィリピン外務省、国際移住機関(IOM)マニラ事務所、民間支援団体・NGO、民間斡旋業者へのインタビュー調査を実施する。フィリピン調査で得られた知見は適宜、学術雑誌・紀要等に中間報告として投稿するほか、協力を仰いだNGO、関係諸機関、にもデータ提供を行う。 また、平成25年度は、すでに来日して日本に就労・就学等の目的で在住する、支援組織に関わってきた「日比国際児」と支援組織に関わりを持たなかった「日比国際児」に対して、24年度と同内容の非指示面接調査を行う予定である。最終年度である25年度後半には、研究成果の学会発表、学術雑誌への投稿も行う。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
物品費:20万円(外国人若者問題関連図書(和書・洋書)、ICレコーダー、ポータブルプリンター、文具ほか)旅費:外国旅費86万5千円(成田フィリピン渡航費7万5千円、現地宿泊費(1日9千円×15日=13万5千円)、日当(1日5千円×15 日=7万5千円)、フィリピン国内航空費(1万円×10往復=10万円)、現地交通費(レンタカー1日8千円×60日=48万円)※(平成24年度は勤務先の在外研修制度によるフィリピン滞在期間に上記調査の一部を行うため、海外渡航費を減額する)国内旅費 30万円謝金:70万円(現地リサーチアシスタント謝金25万、テープ起こし謝金35万円、書類整理謝金10万円)その他:11万5千円(郵送費、通信費など)計218万円
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