2012 Fiscal Year Research-status Report
トランスナショナルに構築される「日比国際児」のアイデンティティとキャリア・プラン
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23730475
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Research Institution | Yokohama National University |
Principal Investigator |
小ヶ谷 千穂 横浜国立大学, 都市イノベーション研究院, 准教授 (00401688)
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Keywords | 日比国際児 / フィリピン / 国際社会学 / キャリア・プラン |
Research Abstract |
日比間の人の国際移動の帰結として生まれた在比「日比国際児」のアイデンティティ構築過程の中でも、特に10代後半~20代前半の「キャリア・プランの設定」という場面に着目し、そこにおける国家・市場・市民社会、という3つのアクターと当事者との相互作用 を解明することで、「日比国際児」の動態的なアイデンティティ構築を国際社会学的視角から実証的に分析することを目的とする本研究であるが、2年目にあたる本年度は、昨年度末の計画通り、マニラ首都圏を中心に在住する、支援組織にかかわってきた若者へのインタビューを実施した。また、本年度は前回採択された研究の成果も交えた成果発表にも力を入れた。 本研究開始時にあたっては以下の仮設を用意していた。「支援団体にかかわってきた子ども/若者の場合は、市民社会的発想に基づく「日比国際児」アイデンティティが構築される」。本年度の調査においては、以下の新たな知見が導かれた。①支援団体にかかわってきた若者は、活動への参加を通して多様な「日本」経験をしているおり、それは必ずしも彼らの出生時における条件(日本人が父親である)に直接関係するものではないこと、②こうした多様な「日本」経験によって就労先として日本を選択するかどうかは、母親との関係性の度合いに規定される側面が大きいこと。 また本年度は、同時並行で着手している科研費による共同研究の成果との比較の視点から、「国際移動と子ども」という大きな研究課題における日比国際児の位置づけについて、国際学会での論文発表において検討する機会を多く得ることができた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
昨年度の研究進捗が遅れていたのに対して、今年度は昨年度末の計画におおむね沿う形で調査を実施できた。ただし、支援組織とかかわりを持たなかった日比国際児へのインタビューがやや不足しているので、この点は来年度の課題としたい。 なお、本年度は当初の計画を超えて、成果発表の機会を多く持つことができた。
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Strategy for Future Research Activity |
本年度調査がやや不足した、支援組織にかかわりを持たなかった子ども/若者のキャリア・プランに関するインタビュー調査を平成25年9月下旬および平成26年2月あるいは3月に実施する。また、すでに来日して日本に就労・就学等の目的で在住する、支援組織に関わってきた「日比国際児」と支援組織に関わりを持たなかった「日比国際児」に対して、初年度と同内容の非指示面接調査を随時行う予定である。また、本年度に引き続き、最終年度としてこれまでの研究成果のまとめおよび学術論文・学会発表を通した成果発表を行う。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
昨年度は勤務先での海外派遣研修によってフィリピンに5か月間滞在したため、予定していた外国旅費を本研究費より支出する必要がなく残額が生じた。最終年度である次年度はその分を外国旅費に充当する。 物品費:20万円(外国人若者問題関連図書(和書・洋書)、文具ほか) 旅費:外国旅費91万円(成田フィリピン渡航費7万5千円×2回=15万円、現地宿泊費(1日9千円×30日=27万円)、日当(1日5千円×30 日=15万円)、フィリピン国内航空費(2万円×2往復=4万円)、現地交通費(レンタカー1日1万円×30日=30万円) 国内旅費 30万円謝金:20万円(テープ起こし謝金10万円、書類整理謝金10万円) その他:3万円 計:164万円
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