2012 Fiscal Year Annual Research Report
生態系サービス評価の環境社会学的再検討―環境正義概念と浜名湖の事例研究から
Project/Area Number |
23730477
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Research Institution | Shizuoka University |
Principal Investigator |
富田 涼都 静岡大学, 農学部, 助教 (20568274)
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Keywords | 生態系サービス / 環境正義 / 資源管理 / 浜名湖 |
Research Abstract |
本研究では「誰が」生態系サービスを享受するべきかなどの生態系サービスに関して環境正義の観点から公正な評価をするために、生態系サービスの媒介プロセスと分配プロセスの動態についての浜名湖周辺の社会調査を進めた。具体的には、観光や漁業振興、祭礼などについての生態系サービスの媒介プロセスと分配プロセスについて、資料調査及び聞き取り調査を進めた。その結果、浜名湖内でもエリアによって媒介プロセスの歴史的変遷の様相が異なることが示唆されたほか、これらの社会調査および理論研究を通じて、分配プロセスにおいても漁業者と観光業、自然保護団体などの違いだけでなく、特に漁業者間でも経済的・政治的な関係の違いやそれにともなう分配のプロセスへの関与の違いなどが明らかになった。また、「誰が」生態系サービスを享受するべきかという問題を突き詰める中で、生態系サービスの分配プロセスでは、例えば、ローカルな地域内(集落)、流域(浜名湖など)、都道府県レベル、日本全国、国家間レベルという入れ子構造が存在することが明らかになった。一方で、生態系あるいは社会的な変動から、媒介プロセスが変化し「潮干狩り」などのサービスが衰退する一方で「今切の渡し」など、これまで認知されなかった「生態系サービス」が登場するというダイナミズムも新たに観測された。 以上のような研究成果とサブサイトとの比較検討からも、最終的に享受できる生態系サービスの豊かさは、社会的な媒介プロセスの多様さと、生態系の豊かさ(生物多様性)の関数として見ることができることが示唆された。一方で、新たな生態系サービスのダイナミズムに関しては、歴史的・政治的・地理的経緯からの媒介プロセスの変化と分配プロセスのあり方に密接な関係があることも示唆された。 また、これらの研究成果は学術的な発表のほかに現地でのワークショップなどを通じて社会還元を行った。
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Research Products
(10 results)