2011 Fiscal Year Research-status Report
保育による地域への介入過程に関する社会学的研究―保育の「誕生」から全域化まで―
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23730483
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Research Institution | Kumamoto University |
Principal Investigator |
増田 仁 熊本大学, 教育学部, 講師 (80510560)
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Project Period (FY) |
2011-04-28 – 2015-03-31
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Keywords | 保育 / 社会学 / ジェンダー |
Research Abstract |
教育社会学、家族社会学、地域社会学、ジェンダー論、社会史、農村生活史研究に関する先行研究の再検討を行い、保育を研究対象とするにあたっての理論的枠組の構築を行った。また子どもに焦点を当てた「生活改善」を対象とするため、家政学的教育の系譜をアメリカと日本の先行研究から分析していった。本研究では主に「高度経済成長期」に焦点を当てるため、ゴードンらによって近年研究が進みつつある高度経済成長期論をリファーし、当該期の分析視角を練り上げた。具体的には、「一億総中流」などといった言葉や所得の上昇等の数値から了解されてきた「高度経済成長期」の日本社会を、「中流」から排除されてきた者の視点(そこに農村の女性や子供が含まれる)から分析する必要性を再確認した。 平成23年度は、熊本県天草地方における「高度経済成長期」の保育、とくに子どもの食生活の「改善」過程に関する資料収集、およびインタヴュー調査を行い論文にまとめた。具体的には、統計資料から天草地方が出稼ぎや移民が多かったことを確認し、耕作面積の少なさなど生活上の課題を数字から導き出した。さらに天草アーカイヴスにおいて当該期の広報誌を収集・分析し、子どもの病気が問題となっており、親や小学校による栄養学的「指導」の必要性が認識されていたことが実証された。さらに農協所属の生活改良普及員へのインタヴュー調査を行い、どのような栄養学的介入が親を通して子どもに対してなされていったのかを明らかにした。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
九州の保育については調査が完了し、論文にまとめることができた。しかし、東北、具体的には山形県庄内地方の保育については、調査が途中であり、今後さらに資料の収集・分析および調査を進めて論文にまとめる必要がある。
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Strategy for Future Research Activity |
山形の庄内地方での「高度経済成長期」前半における農繁期託児所に関する調査研究を進め、論文にまとめる作業を行う。その後、農繁期託児所の系譜をたどるため、農繁期託児所の萌芽期から戦間期の資料収集・分析、論文作成を行う。さらにイギリスの産業革命期以降の子どもの生活・労働についても現地に行って資料を収集し、子どもの生活上の問題をどのように「解決」しようとしたのか、分析をおこなう。そして日本のケースと比較検討を行う。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
イギリスでの資料収集を夏季と冬季の2回、10日間にわたって行うため、その旅費や宿泊費、資料のコピー代等に研究費を当てる予定である。また、農繁期託児所の萌芽期から戦間期の資料収集を行うため、資料の取り寄せやコピー代に研究費を使用する。
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