2011 Fiscal Year Research-status Report
インドネシアにおけるゲーテッド・コミュニティについての地域社会学的研究
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23730484
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Research Institution | Kagoshima University |
Principal Investigator |
菱山 宏輔 鹿児島大学, 法文学部, 准教授 (90455767)
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Project Period (FY) |
2011-04-28 – 2014-03-31
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Keywords | ゲーテッド・コミュニティ / セキュリティ / インドネシア / バリ / コミュニティ / 空間的移動 / 空間的流動性 |
Research Abstract |
ゲーテッド・コミュニティに関する理論研究においては、米国の事例と枠組みを橋頭堡に、後の事例研究と枠組みの応用・修正の状況を把握するために、西欧(オランダ)、ジャカルタの事例を比較検討した。これにより、東南アジアのゲーテッド・コミュニティを分析する枠組みとして、空間的移動と流動性についての議論をとりいれる可能性を導くことができた。その延長に、インドネシアの事例分析への応用のために、特に英国において発展をみせている空間的移動に関する社会理論に着目し理論研究を行った。以上から、ゲーテッド・コミュニティを規範的な立場から批判するコミュニティ論をこえて、ゲーテッド・コミュニティの新たな類型とともに、現代のコミュニティを積極的に評価するための視点を抽出することが可能となろう。ゲーテッド・コミュニティに関する一次資料収集においては、Dinas IMB(デンパサール市許認可局)において各年次の建て売りの状況についてのデータ、Dinas Tata Ruang(デンパサール市都市計画局)においてはデンパサール市都市計画と、地域規制計画、土地用途の違反状況についてのデータを入手した。統計局においては、宅地造成状況に関する統計データを入手した。ディベロッパーにおいては、ゲーテッド・コミュニティの開発状況、住民構成についてのデータを入手した。さらに、特定のゲーテッド・コミュニティにおいて、ディベロッパーの従業員かつ住民のリーダーに該当する人物へのインタビューを行い、住民への情報提供の詳細、運営状況といったよりミクロなデータを入手することができた。このことにより、分析枠組みと、次年度以降のアンケート調査の設計の妥当性をより明確なものとすることが可能となろう。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
ゲーテッド・コミュニティについて分析する際の本研究における独自の視点として、空間的流動性への着目がある。この点について、英国におけるモビリティ・スタディーズの成果を取り入れることで、広く地域社会学あるいは都市社会学が基底とする「定住」や「不動の場所」への視点を相対化しながら、事例を位置付けるとともに、理論的フィードバックが可能となる見込みである。フィールドワークにおいても、Dinas Tata Ruang(デンパサール市都市計画局)においてはデンパサール市都市計画のみならず、都心部の地域規制計画から、都市計画の具体化の状況をより詳細に把握することが可能となったこと、土地用途の違反状況のデータから、ゲーテッド・コミュニティ形成の社会的背景としてデンパサール市の現状を描写することが可能となったことは、当初計画以上の成果である。加えて、現地ディベロッパーの協力により、ゲーテッド・コミュニティの居住者の属性とともにディベロッパーの介在の状況について、予定以上に詳細なデータを入手することが可能となった点は、当初の計画以上の成果であるといえる。
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Strategy for Future Research Activity |
理論的研究としては、引き続き、ヨーロッパにおけるモビリティ・スタディーズが地域社会研究にどのような影響をもつのかという視点のもとに先行研究のレビューを行いつつ、ゲーテッド・コミュニティの把握・分析のための枠組みへの応用可能性を追求する。なお平成24年度においては、ゲーテッド・コミュニティを流動性の観点から捉えるという発想をうけて、モビリティ・スタディーズを主眼とした研究会(於:東京都)への参加を打診されており、当該研究会への出張が見込まれる。フィールドワークにおいては、ゲーテッド・コミュニティをめぐる制度的布置構成ならびに社会状況の把握を継続しつつ、ゲーテッド・コミュニティの区長へのインタビューを深化させ、アンケート調査の準備を行う。その延長に、ディベロッパーの協力を得て、留め置きのアンケート調査を実施する。フィールドワークに関連する変更点としては、平成24年度の第1回目のフィールドワークを8月としていたところ、山下晋司東京大学教授からの依頼により7月にインドネシア共和国バリ島にて開催される国際学会のパネリストとして参加することとなったため、あわせてその前後にフィールドワークを行うことを計画する。この場合、アンケート調査のための調査票の準備の期間が短くなるとともに、7月に十分な時間を確保できるかどうかは未定のため、平成24年度の第2回目のフィールドワークにてアンケート調査を行うことを視野に、7月に予定するフィールドワークにおいては予備調査を主眼とすることが計画され得る。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
交付申請書のとおり、研究費の大部分はインドネシア共和国バリ州における現地フィールドワークのために使用される。新規の使用計画として、モビリティ・スタディーズを主眼とした研究会(於:東京都)への出張ならびに、国際学会での報告に伴う支出(登録・参加費、懇親会費、会議費等)が見込まれる。
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Research Products
(6 results)