2011 Fiscal Year Research-status Report
街並み保存活動における地域的共同性と市民的公共性:日台の比較社会学的研究
Project/Area Number |
23730486
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Research Institution | Takasaki City University of Economics |
Principal Investigator |
石井 清輝 高崎経済大学, 地域政策学部, 講師 (30555206)
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Project Period (FY) |
2011-04-28 – 2014-03-31
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Keywords | 街並み保存 / 共同性 / 公共性 |
Research Abstract |
23年度は当初の計画通り、(1)本研究の分析視角を明確にするため、社会学の領域を中心とした理論的な検討を行い、(2)日本及び台湾の建築・街並み保存活動の実態の調査ならびに制度的な背景の確認を進めた。 (1)について、本研究では第一に、建築・街並みという物理的な環境を社会学的に対象化するため、新都市社会学を中心とした空間論の分析枠組みを、第二に、「地域的共同性」と「市民的公共性」を対象化するため、社会運動論における両者の位置づけを検討した。これらの検討から、マクロな政治経済的変動の中で、多様なアクター間の相互作用を経て個別の「場所」が切り出されていく過程に注目する必要性が明確になった。また、このような変動過程において、「共同性」と「公共性」の質的な転換が生じており、「場所」をめぐり生じる関係性の変容・形成過程の解明が、理論的な観点からも調査研究において求められる視点であることが明らかになった。空間の社会学的研究は未だ途上段階にあり、分析視角の明確化は、今後の研究の進展のためにも意義を有するものであろう。 (2)について、日本、台湾共に、保存活動に関連する人々への調査を行う上で、どのような形態で活動が進められているのかを明らかにする必要がある。そのため、日本では調査候補地の建築保存、活用の実態の確認、予備調査を進めた。結果、活動を支えるNPOやボランティアの実態が明らかになってきた。台湾に関しては、全国的な活動の実態の確認を進めたが、当初の想定以上に行政の制度的関与の影響が大きいことが明らかになってきた。多くの場所で、保存運動当初は住民や関連団体が一定の役割を果たすが、後の維持・活用に関しては、住民参加の度合いは必ずしも高くない実態が見られる。従って、行政の関与とその政策的な意図の解明が必要とされており、これは今後の研究においても踏まえるべき重要な論点をなすものと言えよう。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
当初の23年度計画では、街並み保存活動を社会学的に対象化するための理論的検討と、日本、台湾における街並み保存活動を支える制度的背景、及び実態の調査を予定していた。理論的検討、及び日本に関する研究はおおむね順調に進展しているが、台湾の街並み保存活動に関しては、制度的背景の確認及び実態の把握がやや遅れている。
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Strategy for Future Research Activity |
今後の研究については、当初の計画通り、理論的な視点の整理を行った原稿の執筆を進め、同時に日本、台湾に関する街並み保存活動の調査を進める。ただし、台湾については、保存活動を生み出す制度的、社会経済的背景の重要性が明確になってきたため、当初の計画を若干変更し、これらの解明を重点的に進めることで対応していく。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
主に理論的な書籍と台湾に関連する書籍を購入するための物品費の使用を予定している。また台湾における調査、資料収集のための旅費、及び通訳の謝金の使用を予定している。
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