2011 Fiscal Year Research-status Report
小売業における職務分析・職務評価手法を用いたデータによる実現可能な均等待遇の検証
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23730494
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Research Institution | Atomi University |
Principal Investigator |
禿 あや美 跡見学園女子大学, マネジメント学部, 准教授 (00388597)
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Project Period (FY) |
2011-04-28 – 2014-03-31
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Keywords | 職務評価 / 同一価値労働同一賃金 / 均等待遇 / パートタイム労働者 / ジェンダー |
Research Abstract |
本年度は、均等待遇を実現させるために必要な政策ツールである職務分析・職務評価に関する調査を来年度に実施するための準備研究として、以下の5つを行った。 (1)調査協力対象者への調査依頼、予備的ヒアリングの実施、(2)調査対象産業(小売業)における人事諸制度の情報収集・分析、(3)職務分析・職務評価に関する調査・研究の収集・分析、(4)短時間労働者および有期契約労働者に関する政策の現状分析、課題の整理、(5)その他、均等待遇に関連する公平な労働政策実現に関わる地方自治体の政策の現状分析。 (1)について、調査協力者として当初想定していた生協の労働組合に依頼したところ、快諾頂き、千葉県や愛知県の事業所を紹介していただいた。また現場でどのような課題が生じているのかについて、予備的ヒアリングを実施し、次年度に向けての下準備とした。さらに比較対象企業として民間流通企業を紹介していただける可能性が出てきた。具体的交渉は次年度であるが、実現に向け引き続き努力する。 (2)、(3)、(4)については、特に次の点に配慮し研究・分析した。現行の法制度が、個々の企業での人事制度の運用にあたり、どのような影響を及ぼしているのかを考察し、そこから、法や制度の具体的課題を洗い出し、その課題を解決するために職務評価調査がどのような役割を果たしうるのかについて考察した。その結果、特に現行のパートタイム労働法の運用上の課題を明らかにするとともに、職務評価制度の法や政策上の活かし方として5つ想定できることを明らかにすることができた。 (5)について、現実の法や制度の運用では、条文のみならず、行政と企業やNPO等の民間団体との有機的連携が必要不可欠となる。地方自治体による地域雇用政策の先行事例として3箇所の自治体およびNPO等にインタビューを行い、現実に職務評価制度が導入された場合にどのように行政がサポートできるのか、課題を考察することができた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
交付申請書に記載した、本年度の実施予定作業は、次の4つである。1)小売業の経営戦略や人事制度に関する研究・資料収集、2)職務分析・職務評価に関する資料の収集・分析、3)調査協力企業の選定とインタビュー予備調査の実施、4)次年度に向けての準備、である。 1)および2)については国内外の論文や書籍を入手し、分析することができた。しかしその作業を質的に充分に行うことができなかったため(理由は後述)、次年度も引き続き実施する必要がある。 3)については当初の予定通り調査対象企業に調査依頼をしたところ、快諾いただいたことから、調査実行の目処を立てることができた。これは4)の次年度に向けての準備にも該当する。 以上のとおり、当初予定の作業をすべて実行することができた。しかし、研究目標である「日本で実現可能な均等待遇手法の提案」を達成するためには、上記の当初の研究計画の内容では足りず、法や政策の現状と課題を明確にする必要があると判断したため、上記の計画に加えて、5)現行法の課題の明確化、および、6)地方自治体が実施する地域雇用政策の現状に関するインタビュー調査を追加的に実施することにした。これによって、より多面的に現状を分析することができた。 当初の予定になかった調査を追加したため、当初目標の1)および2)の実施について、その研究上の質を次年度にさらに高める必要があり、それは次年度の課題として残された。とはいえ、当初予定以上の研究作業を実行することができた。これらの事情を総合的に勘案し、「計画以上の進展」ではなく、「概ね順調な進展」であると評価することとした。 次年度は、本年度に行った研究を踏まえ、本格的なインタビュー調査およびアンケート調査を実施し、その入力作業および単純集計を行う予定である。また、最終年度にはこれらを総合的にまとめ、分析し研究成果として発表する予定である。
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Strategy for Future Research Activity |
研究の最終目標である「日本で実現可能な均等待遇手法の提案」をするために、初年度は法と政策および企業内人事制度の現状分析を行った。次年度は、実際に3つほどの企業や事業所を対象に、職務分析・職務評価調査を実施しデータに基づく実証分析を行い、最終年度はこれらを総合化し研究をまとめる予定である。 研究2年目となる次年度は、3つの企業または事業所を対象に調査を実施する予定である。中心となる研究の作業内容は、1)インタビュー調査による職務分析、および、企業内人事諸制度の現状と課題の明確化、2)アンケート調査による職務評価の実施、3)アンケート調査回答結果の整理および入力、4)アンケート調査の単純集計である。このうち、3)は調査専門企業にアンケート調査回答内容の入力作業を委託するが、それ以外については研究代表者自身が行う。 業者への委託については、特にスケジュール管理を厳密に行い、作業の依頼(12月)、作業(1月から2月)、支払い(3月)を年度内に完了する必要がある。そのため、前述した本年度の研究内容のうちの、1)インタビュー調査や、2)のアンケート調査を実行するための調査表の完成を10月には終了させ、調査表の配布および回収を11月中に行い、12月にはデータクリーニングを終了させ、業者に業務委託する計画である。 最終的には、正社員と非正社員の均等待遇を実現するための具体的制度である「職務分析・職務評価手法」と企業の人事制度と慣行、現行の法制度との整合性を検証することによって、日本で実現可能な均等待遇手法の提案を行う予定である。そのため、次年度においても初年度の研究を継続させ、日本企業の雇用慣行および現行法制度の分析、諸外国における職務分析・職務評価制度に関する法や制度の内容と運用の実態把握を行い、次年度に行うアンケート調査データの分析を参照しながら、実現可能性の高い制度の提案を行う。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
上記で述べた次年度の研究内容の実施期間と研究費の概要については、以下の通りである。1)インタビュー調査による職務分析および企業内人事諸制度の現状と課題の明確化については、8月中に終了することを目処に実施する。研究費として資料整理アルバイト謝金や調査旅費等として合計10万円使用予定である。2)アンケート調査による職務評価の実施については、11月までに調査表を配布、回収が終了することを目標に実施する。アンケート調査印刷費用、通信費として8万円、アンケート調査回答者謝金として30万円、アンケート回答者への謝金郵送アルバイト謝金として4万円計上している。回答者への謝金が30万円なのは、今回実施する職務評価調査の回収率を上げるための工夫である。この調査は一般的なアンケート調査とは異なり、調査回答者が受け取っている賃金額の正確な数値と、職務評価に関する詳細な内容を回答して頂く必要があり、調査に回答するという作業そのものがかなり煩雑になるため、回収率が低くなることが予想される。したがって、調査協力企業の労組の全面協力を取り付けるとともに(これは実施済み)、回答者への謝金として図書カードを1人1000円支払うという工夫を行うこととした(申請書に既述の通り)。調査表は500部配布する予定である。3)アンケート調査の整理および入力については、専門業者に委託するため、12月には依頼、1月から2月には入力作業の終了とデータの授受、3月には支払いを含めてすべての作業を終了する予定である。この委託費として40万円計上している。4)アンケート調査の単純集計について、実際の作業は研究代表者が行うためその作業についての費用は計上していないが、単純集計や分析に際し必要となる書籍代として6万円を計上し、通年を通じて使用する予定である。 以上が、次年度の予算98万円の使用時期と金額の計画である。
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