2012 Fiscal Year Research-status Report
小売業における職務分析・職務評価手法を用いたデータによる実現可能な均等待遇の検証
Project/Area Number |
23730494
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Research Institution | Atomi University |
Principal Investigator |
禿 あや美 跡見学園女子大学, マネジメント学部, 准教授 (00388597)
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Keywords | 職務評価 / 同一価値労働同一賃金 / 均等待遇 / パートタイム労働者 / ジェンダー |
Research Abstract |
本研究は、同一価値労働同一賃金原則に基づく職務分析・職務評価調査を、日本の人事制度に配慮した形で実施することによって、日本における実現可能な均等待遇施策の具体的な提言を行うものである。2年目にあたる本年度は、職務分析・職務評価に関する調査を、いくつかの企業を対象に実施し、本研究の核となる作業を当初の計画に沿って行った。 実施した研究内容は下記の通りである。1)調査協力企業を3社選定し、調査の申し入れ、承諾を得た。 2)3社に対するインタビュー調査を実施した(1社あたり5回、15名程度)。インタビューを通じて明らかになった各社の人事制度の概要と、パート労働者の活用戦略にあわせ、3)アンケート調査表の設計を行った。ここでは後の分析につながるよう、共通した質問項目と、各社の人事制度の実情に合わせたオリジナルの質問項目を合わせ、5種類の調査表を作成した。そして、その調査表が現場労働者にとって回答しやすい設計となっているか否かを確かめるため、調査対象3社において、4)アンケート調査表に対する意見聴取(プレ調査)をおこない、内容の精査を行い、修正した。これらの過程を通じて確定した5)アンケート調査表を、各社の協力のもと配布した(配布数約500通)。そして、6)それを回収した(回収数約300)。この5)6)に当たるアンケートの配布・回収については、調査対象企業の1社において、先方の都合により次年度に繰り越されることとなったため、本年度は2社のみで配布・回収を行った。残りの1社については次年度早々に配布・回収する準備を整えた。さらに、これらのすべての作業に平行し、7)職務評価システム、なかでも職務評価の基準となる評価尺度の定義・レベルの設定を行った。職務評価基準の定義・設定に関しては、先行研究の検討を踏まえ、本研究によってオリジナルのものを作成した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
交付申請書に記載した、本年度の実施予定作業は、次の4つである。1)調査表の作成とプレ調査の実施、2)職務評価調査の実施、3)データのクリーニングと入力、4)データの集計。 このうち、1)2)3)については、調査対象企業3社のうち2社において終了することができ、研究を順調に進めることが出来た。本来であれば調査対象企業3社すべてで上記の研究を実施する予定であったが、1社においてのみ、翌年度に繰り越すこととなった。というのも、アンケート配布・回収の時期が、調査対象企業の繁忙期にあたること、加えて人事異動の時期とも重なることから、翌年度の6月に繰り越した方が、アンケートの回収率が上がり、データの精度も上がると判断したからである。このような事情から、4)データの集計については、すべてのデータ入力が終了してから行うべき作業であるため、翌年度に繰り越すこととした。 以上のように、当初の計画のすべての研究を終了することができなかった。具体的な理由は上述の通りであるが、その背景には、上記4つの作業の1)に当たる調査表の作成について、インタビューを多く重ね丁寧に行ったため、当初の予定よりも時間がかかり、アンケートの配布時期が予定より遅れたことがある。日本の雇用慣行に配慮した職務評価調査を実施するという研究の目的を遂行するためには丁寧な調査表の設計が欠かせなかったとはいえ、スケジュールの遅れは反省すべきである。 翌年度に速やかに、残り1社分のアンケート表の配布・回収・入力ができるよう、準備を万全に整え、また、3社のデータの集計作業が行えるよう、本年度中に出来ることはすべて行い、次年度に備えている。また、昨年度積み残していた課題である、職務分析・職務評価に関する資料の収集と分析を追加的に行い、職務評価基準の定義・設計に関する研究を行うことによって、今後の分析・検証作業に備えることが出来た。
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Strategy for Future Research Activity |
研究の最終目標である「日本で実現可能な均等待遇手法の提案」を行うために、これまで法と政策および人事制度の現状分析を行うとともに、企業を対象に職務分析・職務評価調査を行ってきた。研究の最終年度である次年度は、職務分析・職務評価調査の本格的な分析と、企業内の正社員とパート労働者の人事・処遇制度の分析を行い、これらを組み合わせた研究を行う。 次年度は、まず研究代表者は、1)調査対象企業3社のうち、残り1社を対象にアンケート調査表の配布・回収を6月中に終了させる。その後、データのクリーニング作業を行ない、2)データの入力作業を行う。さらにこれらに平行し、4月より、すでに回収している2社の調査表についての、3)単純集計作業を行う。さらに3社のデータがそろった後、4)データの本格的な集計・分析作業を行う。以上の2)~4)の作業は業者に委託し、4月から7月にかけて行ない、研究代表者は随時その状況を把握し、集計や分析の指示を出す。 これらのデータ分析を基礎に、研究代表者自身は、調査対象企業の人事制度・人員配置・賃金制度との関わりに注意しながら、追加的な分析作業を8月~11月に行ない、日本の雇用慣行と職務分析・職務評価の整合性について考察を深め、独自の職務評価手法の開発につなげてゆく。そのために調査対象企業に調査結果を提示するとともに、追加のインタビュー調査を行う。必要に応じて9月~12月にかけて追加的なデータ分析作業を業者に依頼する。さらに、現行の政策との整合性について考察を加える。12月~3月にかけて、これらのすべての研究をまとめ、日本企業の雇用慣行に配慮した均等待遇のあり方を、企業内人事制度、法律、政策の側面から考察し、報告書としてとりまとめる。また平行して、研究成果を学会等において発表し、ディスカッションを通じて明らかになった研究の課題を踏まえ、議論を修正し、報告書を完成させる。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
上記で述べた次年度の研究内容の実施期間と研究費の概要は、以下の通りである。 1)データの入力・単純集計・分析作業について、業者に委託する。期間は4月から7月とし、研究代表者は随時その状況を把握し、集計や分析の追加的な指示を行う。費用として、40万円を使用する予定である。これは本年度支出予定であったものを次年度に繰り越したものに該当する。 2)アンケートの作成・印刷・整理等に関わる文具や通信費、消耗品費として5万円を使用する予定である。4月以降、随時使用する。 3)職務分析・職務評価に関わる図書・資料代として、10万円を使用する予定である。年間を通じて使用する。 4)アンケート回答者への謝金として、20万円使用する予定である。アンケートを締め切る6月末に使用する。前年度と同様に、図書カードを回答者1人につき1000円支払う。今回実施する職務評価調査は、一般的な調査とは異なり、調査回答者が受け取っている賃金額の正確な数値と、職務評価に関する詳細な内容を回答して頂く必要があり、調査に回答する作業そのものが煩雑である。回収率を確保し、調査の精度を上げるための工夫として、前年度と同様今年度も謝金を支払う。200名の回収を見込んでいる。 5)データの追加分析について、業者に委託する。期間は9月から12月とし、研究代表者は随時状況把握と指示を行う。費用として、20万円使用する予定である。 6)旅費として、10万円使用する予定である。9月~11月にかけて、調査対象企業3社それぞれに、データの分析結果を踏まえながら人事制度に関する追加的インタビュー調査を実施する。また12月から3月にかけて研究成果を学会等で発表するために使用する。 以上が、次年度の予算約95万円の使用時期と金額の計画である。
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