2013 Fiscal Year Research-status Report
自己決定にかかわる支援における偶有性とそれを活かす組織についての実証的研究
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23730497
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Research Institution | Hosei University |
Principal Investigator |
三井 さよ 法政大学, 社会学部, 准教授 (00386327)
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Keywords | 知的障害 / 包摂 / 偶発性 |
Research Abstract |
昨年度は、第一に、多摩地域での調査研究を継続的に展開した。グループホームでの生活支援の状況、あるいは介護労働者の置かれた状況や仕事に対して感じる「つらさ」「つまらなさ」「痛み」などについて、現場で働く人たちの声を聴き、また同時に参与しながら観察を続けた。また、他者に危害を与える知的障害当事者を取り巻く状況について、当事者から危害を与えられた側の視点も取り入れつつ、渦中にある人たちの葛藤や模索、ネットワークを作りながらの取り組みなどに、自身もかかわりながら調査研究を進めた。 第二に、ニクラス・ルーマンの議論の検討も継続的に展開した。特にダブル・コンティンジェンシー概念およびインクル―ジョンとエクスクルージョンに関して、ルーマンの議論全体を再検討しながら考察した。 第三に、これらに基づいて論文等を執筆した。一部はまだ投稿中である。具体的には、多摩地域での知的障害者支援活動の本質をどのように捉えるかということをテーマとし、それが当事者とのかかわり、あるいは支援者同士のかかわり、さらにいえば周囲の近隣住民とのかかわりをそれぞれダブル・コンティンジェンシーとして捉えかえし、そのつど何が起きているのかを探り続ける姿勢だということを明らかにした上で、それが問題の解決を求めるものというより、関わり続けることそのものなのだということを、近年のルーマン解釈の議論に即して明らかにした。 以上の中から見いだされてきたのは、知的障害を持つ人たちの包摂という課題について、彼らが問題であるとみなす考え方や、逆に「障害」が擬制であると捉える考え方ではアプローチしきれない領域があり、それは理論社会学においても重要な課題であるということである。昨年度はその理解を深めると同時に、具体的にその議論を展開することに力を注いだといえる。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
執筆した論文がまだ投稿中であり、査読結果がまだであるなど、具体的な結果や成果として目に見えるものはあまり多くはない。ただ、実際の調査研究の中でテーマや考察が深められる部分は大きく、おおむね順調に進展していると言ってよい。
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Strategy for Future Research Activity |
今後も参与観察については継続し、その理論的な考察と記述に今後はより力を注ぎたい。調査対象となる団体やネットワークにはそれとしての歴史もあるが、そのことについてはまだ十分にまとめきれておらず、今年度の課題である。
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