2011 Fiscal Year Research-status Report
日本型マス・ツーリズムの生成過程におけるメディアの社会的機能に関する実証的研究
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23730507
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Research Institution | Kansai University |
Principal Investigator |
山口 誠 関西大学, 社会学部, 准教授 (80351493)
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Project Period (FY) |
2011-04-28 – 2015-03-31
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Keywords | マス・ツーリズム / メディア / グアム / 観光行動 / 大衆文化 / ガイドブック |
Research Abstract |
日本型マス・ツーリズムの生成過程を事例に基づき検討し、そこに観察されるメディアの社会的機能を分析するため、申請初年度にあたる本年度では(1)基礎理論の読解と先行研究の把握、(2)米領グアム島における観光開発と日本人観光現象に関する資料収集と聞き取り調査、(3)米領グアム島を補完する新しい事例の検討、について取り組んだ。 上記のうち(1)についてはヨーロッパ圏(とくにイギリスとオランダ)におけるメディア・ツーリズム研究の蓄積と最新の研究成果を発見することができた。(2)については米領グアム島の日系人への聞き取り調査により、グアム観光における日系人の独特な位置を理解することができ、今後の文献調査による検討作業の行程を明確に設定することができた。また(3)については米領グアム島における日本人観光の弱点を補うため、新たな国内観光地における日本型マス・ツーリズムの生成過程を分析できる事例を探すことに着手し、その調査を継続して行なっている。 これらの研究実績については、学会での発表、研究書や研究論文の公刊、および研究会での学術交流などにより、他の研究者と知見を共有し、さらなる研究の深化に努める予定である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当初予定ではハワイ大学での調査を行い、グアム島の日本人観光行動に関する資料収集を予定していたが、グアム島でのフィールドワークに取り組んだ結果、国内観光における日本型マス・ツーリズムの生成過程に着目した新たな事例を設定することで、海外観光の地であるグアムとの補完関係が期待できるため、研究対象と資料収集のための用務地を発展的に変更することができた。 さらにメディアと観光の関係を考えるうえで貴重な知見を提供してくれる、イギリスとオランダの観光メディアに関する研究書および研究論文を複数入手し、読解することができた。そのためメディアと観光が連動して新たな社会現象を生み出す事例を以下に設定し、そうした研究事例に対していかなる研究方法によってアプローチするべきかを、理解することができた。この成果は、次年度以降の研究活動において活用できるものが多い。 上記の理由により、日本型マス・ツーリズムの生成過程を歴史的に分析することを目指す本研究はおおむね順調に進展している。また今後もさらなる研究の深化と、実績の発表を続けて行うことができると考えられる。
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Strategy for Future Research Activity |
前年度に引き続き、理論検討と事例分析の両方から日本人の観光行動に特有なマス・ツーリズムの様式を考察し、その生成過程を歴史研究の手法で明らかにすることを目指す。 まず理論検討として、ヨーロッパをはじめとする観光研究の先行研究をさらに体系的に収集し、その修得に努める。とくにメディア・ツーリズムの研究に関する理論をできるだけ早く理解し、その実践に着手する。 また事例分析として、米領グアム島に加え国内観光地の事例に並行して着目し、両者を比較して新たな知見を得るため、国内の事例をできるだけ早めに設定できるよう、その調査と研究を国立国会図書館東京館などが所蔵する資料をもとに、次年度のうちに取り組む計画である。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
米領グアム島におけるフィールドワークを続け、とくに日本人のグアム観光における転換期に関する資料をさらに収集し、また日系人が日本人観光者とどのような関係を取り結んでいたのか聞き取り調査を行い、それぞれについて継続した調査活動に取り組む。 グアムへの調査を2度行うことを計画し、現地の観光関係者への聞き取り調査とともに、グアム大学が所蔵する各種資料の閲覧と複写に努める。また新たな事例分析の研究対象地を次年度のうちに設定し、フィールドワークを行い、さらに必要な文献を速やかに入手することを目指す。このため初年度よりも国内出張を多く計画し、効率的な実行に努め、研究論文などの実績につなげられるよう、尽力する。
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