2013 Fiscal Year Research-status Report
日本型マス・ツーリズムの生成過程におけるメディアの社会的機能に関する実証的研究
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23730507
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Research Institution | Kansai University |
Principal Investigator |
山口 誠 関西大学, 社会学部, 教授 (80351493)
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Keywords | マス・ツーリズム / メディア / グアム / 観光行動 / 大衆文化 / ガイドブック / 映画 / 再帰性 |
Research Abstract |
日本型マス・ツーリズムの生成過程を複数の事例において分析し、同過程におけるメディアの社会的機能を考察することを課題とした本研究では、これまで2か年の研究に引き続き、(1)観光メディア理論の構想、(2)フィールドワークによる調査、(3)文献収集を中心とする歴史分析、の3点について取り組んだ。 上記のうち(1)については、J. メイロウィッツのメディア・グローカリゼーション論を参照しつつ新たな観光メディア理論の構築へ向けた学会発表を2014年7月開催の観光学術学会にて行い、また同学会の査読付きジャーナルに単著論文を発表することができた。 また上記(2)に関し、高尾山(東京都)のパワースポット観光、柴又(東京都)のフィルム・ツーリズム、さらに板東俘虜収容所跡地(徳島県)の住民参加型観光まちづくりをはじめとするフィールドワークを複数回実施し、それぞれ現地での関係者への聞き取り調査と関連資料の収集を実現できた。その成果は、複数の学術書(共著)や学術論文として年度内に発表することができた。 さらに上記(3)に関し、国会図書館東京館やNHK放送博物館をはじめとする各地の関連施設において資料を閲覧・収集することができた。 これらの研究実績は、平成26年度に予定されている学会での研究発表、研究書や研究論文の公刊、および研究会での学術交流などにより、他の研究者と知見を共有する基盤としつつ、さらなる研究の深化に努める予定である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
前年度より着手してきたメディア・ツーリズム現象の分析のうち、本年度では日本国内におけるフィルム・ツーリズムの事例に着眼して複数地点でのフィールドワークを実施し、また学会や研究会での研究発表、および研究論文の公刊に努めてきた。とくに東京都葛飾区における聞き取り調査と文献収集では当初の計画通りに研究活動を進めることができ、また今後に向けて取り組むべき課題を整理することができた。あわせて国会図書館での資料収集では必要な関連資料の入手が実現でき、また今後の体系的な資料収集のための計画を立案することができた。 ただし今年度には、これまで10年あまり継続して調査してきた米領グアム島でのフィールドワークを実施できず、そのために資料収集(とくに現地で配布されるガイドブックや観光パンフレットなどの基礎資料の収集)が出来なかったことが、大きな課題として残った。本研究の目標に掲げた、国内の事例だけでなく国外の事例も併せた日本人のマス・ツーリズムの様相の研究を実現していくため、今後の課題として米領グアム島でのフィールドワークの実施がある。
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Strategy for Future Research Activity |
これまで3年間の研究を深化し、最終年度にあたる平成26年度において計画通りの研究成果を発表するため、次年度には(1)これまで以上の学会や研究会での研究発表に取り組む、(2)新たに国際学会での英語による研究発表に着手する、(3)複数の研究論文や研究書を執筆する、という研究成果の発信に向けた3点に加えて、(4)過去3年間に取り組んできたメディア・ツーリズムに関するフィールドワークと文献収集を継続して行なうこと、を目指したい。 このうち(1)と(2)については、既に複数の国際学会・国内学会での発表申請が受理されており研究発表の準備に着手している。(3)については一年間を通じて論考を執筆する予定であり、これと関連して(4)のフィールドワークと文献収集が必要になる。次年度には新たなフィールドや現象の調査は試みることなく、過去3年間の研究活動で分析対象としてきたフィールドに照準を当てて再調査することに留める一方で、さらなる研究成果の発表に尽力する計画である。 上記の推進方策を実現するため、次年度に予定する国際・国内学会での研究発表の準備を進め、それぞれの開催地への出張を計画している。あわせて研究論文の執筆のため、過去3年間に調査してきた米領グアム島、柴又(葛飾区)、高尾山(東京都)および沖縄本島(沖縄県)での聞き取り調査と資料収集に継続的に取り組む。さらに国会図書館での文献収集にも継続して取り組み、上記の学会発表と論文執筆に必要な資料の収集に努める。 これらの計画により、出張のための旅費と資料収集費が研究費の使用計画の大半を占めることになる。また過去3年間に収集した資料を整理し、今後の研究活動に供する保存環境を造るため、パソコン、カメラ、スキャナーなどの記録用機材およびフォルダー、ファイルケースなどの文具の購入に研究費を充てる予定である。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
当初計画していた米領グアム島でのフィールドワークを実施できなかったため、研究費の一部を使用せず、次年度使用額が生じた。これは国内事例のフィールドワークにエフォートを注力し、それに関連する研究書と研究論文の執筆を優先したためである。 当初の計画通り米領グアム島でのフィールドワークを実施するとともに、前年度のフィールドワークで成果を出すことができた複数の国内調査地への旅費として活用する予定である。
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Research Products
(5 results)