2013 Fiscal Year Annual Research Report
ローカル・マーケットの日独比較に基づく現代日本の森林荒廃問題の経済社会学的研究
Project/Area Number |
23730508
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Research Institution | Momoyama Gakuin University |
Principal Investigator |
大倉 季久 桃山学院大学, 社会学部, 准教授 (90554147)
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Keywords | 森林荒廃 / 経済社会学 / 日独比較 / ローカル・マーケット / 林業 |
Research Abstract |
本研究は、現代日本の森林荒廃問題について大きく(1)ドイツ林業との比較研究のもとに問題の特徴を明らかにすること、(2)とりわけ問題を政策の展開とローカルな木材マーケットの構造変動とのかかわりあいに着目して比較経済社会学的に分析すること、(3)さらにそうした作業を通して「市場の理論としての経済社会学理論」の深化を図ること、の3つの課題を設定し、総合的に解明することをめざしたものである。 当初の2年間は(2)と(3)のテーマを中心に、文献研究と日本とドイツで実施したフィールドワークをもとにして研究を進めるとともに、近年の経済社会学理論の展開から示唆を受けながら、現代日本における森林荒廃の歴史的な文脈の解読を試みた。 最終年度はこれまでの調査・研究の成果もふまえて(1)のテーマを中心に据えて、日本における森林問題の構造的な特質の解明を試みた。とくに今日の日本の林業政策がドイツをモデルとして展開している状況ふまえて、新たな政策の導入が、政策当局の意図に反して、森林を荒廃させていくことになりかねない実態を考察した。小規模な森林所有者が大半を占める点や、また森林組合を核として産業化を推し進めてきた点など共通項が少なくない日本とドイツだが、ドイツがローカルで自発的に組織された森林組合をベースにした市場の構築を推し進めてきたのに対して、日本の場合、森林組合に市場経験が希薄で、またローカルな市場も分断・再編が進んでいることを問題の背景として指摘できる。 現代の生態システムと経済システムの対抗関係は、市場メカニズムがもつ原理として、不可避な現象ではないし、またそれは市場への信頼によって自動的に解消されるものでもない。対抗関係の解消には持続的かつ開放的な売買のネットワークをベースとしたローカルな市場構築とそれを支える多元的な制度的装置への関連するアクターの信頼が重要になってくることが明らかにされた。
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