2011 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
23730518
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Research Institution | Shiga University of Medical Science |
Principal Investigator |
中村 賢治 滋賀医科大学, 医学部, 非常勤講師 (00541624)
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Project Period (FY) |
2011-04-28 – 2013-03-31
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Keywords | 障害者福祉 / 作業関連運動器障害 / 盲ろう者 |
Research Abstract |
視覚聴覚重複障害者(以下、盲ろう者)に対する触手話を用いた通訳場面の見学を行い、人間工学的にみて手話通訳より負荷が大きいことが理解できた。また、盲ろう者の障害の程度や障害が発生した順序により、コミュニケーション方法が異なることなど、盲ろう者についての理解が深まった。全国的な疫学調査に先立ち、盲ろう者の通訳および移動介助を行う者(以下、通訳・介助員)がどのような作業を負担に感じており、どのような健康状態であるかについての質問項目を策定するため、兵庫県聴覚障害者情報センターの協力のもと、パイロット調査を行った。調査対象者は、通訳・介助員に登録している140名の中で、実際に通訳・介助作業を行っている52名とした。回収率は59.6%(31名)で、同意を得られた12名については別途聞き取り調査を行った。通訳方法別の作業負担や通訳方法の頻度、会議や医療などの場面別の負担、移動介助における負担、長時間に及ぶ通訳・介助作業など、様々な問題が存在することが明らかとなった。また、滋賀県下の通訳・介助員を対象とした質問紙調査も行い、盲ろう者との関係性が、通訳と移動介助だけにとどまらず、生活支援の要素も大きいことも明らかとなった。パイロット調査で得られた情報から、作業負荷と健康状態に関する調査票の作成を行った。また、本研究ではよりよい通訳・介助活動を行うために、改善提案することを指向しており、改善に資するような意見を求める質問内容にした。全国盲ろう者協会の協力のもと、各都道府県の通訳・介助員派遣事務所に疫学調査の対象者の選出と、調査票の郵送をしてもらうよう手配した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当初の計画では、23年度中にパイロット調査として約10名程度の聞き取り調査を行い、調査票を作成し、全国的な疫学調査の準備を行う予定であった。パイロット調査は、聞き取り調査だけではなく兵庫県下、および滋賀県下の通訳・介助員を対象とした質問紙調査を実施したため、より多くの情報が得られた。この質問紙調査と聞き取り調査で、通訳・介助作業の労働負担について、大まかにつかむことができたと考えている。しかし、兵庫県と滋賀県は、通訳手段として指点字を用いる盲ろう者は登録されておらず、通訳・介助員全体を代表しているとは言いがたい。また、健康状態については、通訳・介助活動が活発な方の意見がより強く反映した結果であり、このことからも全国的な調査が必要であることが認識できた。全国的な疫学調査の準備状況では、調査票が印刷段階まで進んだ。各都道府県の通訳・介助員派遣事務所での対象者の選定、名簿作成は完了し、必要調査票数も確定した。現在、調査票の印刷が終了次第、封筒詰めの作業を行い、調査票を郵送する準備をしている。したがって、研究はほぼ予定通りに進展していると考えた。
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Strategy for Future Research Activity |
本研究はこれまで、ほぼ計画通りに進んでおり、予定通り全国的な疫学調査が行えると考えている。調査票は、現在校正が終了し、印刷に入る段階である。印刷された調査票、封筒は滋賀医科大学社会医学講座衛生学部門(以下、当教室)に届けられるようになっている。調査票には都道府県コードを記入し、返信用封筒とともに、郵送用の封筒に詰める作業を行う予定にしており、そのために必要な人員を手配している。対象者の選定は、各都道府県の通訳・介助員派遣事務所で行われ、選定が終わり、対象者の一覧表も作られたと連絡があった。各事務所に郵送する調査票数の一覧表もできており、印刷された調査票が届き次第、郵送作業に入れる予定である。調査票や封筒が当教室に届くのは遅くとも5月上旬を予定しており、調査票を各事務所まで郵送する作業は5月第2週には終了する予定である。調査票が対象者に届く時期は5月中頃を予定しており、回答した調査票を投函する締め切りは平成24年5月31日とした。回収した調査票のデータ入力は、外部の業者に委託する。データクリーニング、解析は当教室で行う。中間報告を、今年の全国盲ろう者大会第5分科会(平成24年8月4日(土)14:00~17:00)にて行う。最終報告書を作成し、全国盲ろう者協会や各派遣事務所など関係者に配布する。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
郵送用の封筒は、全国盲ろう者協会に委託していたため、23年度の出費として支払いが済んでいるが、調査票と返信用封筒の印刷は23年度中に終わらなかったため、24年度の出費とする。印刷には、およそ30万円掛かると見込んでいる。調査票を点字にする費用は、全国盲ろう者協会に委託しており、23年度に支払いが済んでいる。約1,200部の調査票の郵送と返信のための郵送費は、一通あたり140円とすると、およそ40万円掛かる見込みである。データ入力は外部の業者に委託する予定であり、経費が必要である。調査票に都道府県コードを記入して返信用封筒とともに封筒詰めする作業、回収した調査票の整理作業、データクリーニング作業、およびデータ解析作業において研究助手を雇うため、人件費が必要である。日本産業衛生学会、および、日本社会医学会総会などで報告を行うため、往復の旅費や参加費などが必要である。最終報告書作成のため費用が必要である。
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