2013 Fiscal Year Annual Research Report
農地再生事業による社会的包摂の試み―大阪近郊棚田地域におけるアクションリサーチ―
Project/Area Number |
23730519
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Research Institution | Kobe University |
Principal Investigator |
綱島 洋之 神戸大学, 都市安全研究センター, 研究機関研究員 (10571185)
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Keywords | 貧困 / 雇用創出 / 参加型開発 / 国際情報交換 / インド |
Research Abstract |
事業性と社会性の両立を企図してきたNPOや社会的企業,コミュニティビジネスなどの取り組みにおける労働参加は,社会的包摂の現実的な手段として考えられる。耕作放棄地の増大が社会問題として認識されていることに鑑みれば,農地の再生および維持は労働参加の一形態として成立することになる。ただし,これまでの雇用政策から教訓を引き出すのであれば,単なる人手不足の解消策以上の意義を働き手が実感できるか否かが成功の鍵になる。これまでにも、農業分野における労働参加について,実践事例が数多く報告されてきたが,働き手の意見が取り上げられることは少ない。本研究は、野宿者が多い大都市近郊において,耕作放棄地の増大という社会的課題に着目し,高齢野宿者や若者対象の就労支援事業体などの参加を得つつ,農地再生により労働参加機会創出を試みるアクションリサーチを実施した。 その結果,農業労働参加に参加者ごとに異なる意義を見出していることが明らかにされた。すなわち,野宿状態のまま就業できる,就労支援における「意欲喚起」に有効である,労働市場からの排除の予防に有効である,労働市場から排除されても生計を維持する方途となるなど多様である。近年の「自立支援」施策は「就労意欲喚起」に重きを置く傾向にあるが,むしろ求職者の就労意欲を可視化することが必要であり,そのうえで農業労働が有効であることが示唆された。 最終年度には,インドの農民や研究者らと意見交換を行い,本研究が農村開発学に関する国際的な議論に関連付けることが可能か否かを検討した。インドにおいても,農民が主体的に獲得する知識や技能が農業技術発展の基盤を成してきたにも関わらず,それらに対する社会的な評価が低く,さらに日本のような転用規制がないため,離農や農地の改廃が進んでいる。農地を維持することの是非や意義,方法論などは国際的な議論に値する可能性がある。
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Research Products
(4 results)