2011 Fiscal Year Research-status Report
知的障害者の体験知と技術に基づく自立生活モデルの開発
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23730520
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Research Institution | Wakayama University |
Principal Investigator |
古井 克憲 和歌山大学, 教育学部, 准教授 (10553018)
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Project Period (FY) |
2011-04-28 – 2015-03-31
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Keywords | 知的障害者 / 当事者活動・当事者組織 / セルフ・アドボカシー |
Research Abstract |
本研究では、知的障害者の地域生活における体験知と技術を基にした自立生活モデルの開発を目指す。全身性障害者や精神障害者の自立生活における体験知や技術は、自立生活運動、浦河べてるの家の実践にみられる当事者活動・当事者組織から創造されていると考えられる。そこで平成23年度は、日本における知的障害者の当事者活動と当事者組織に関する先行研究の分析と整理を行った(古井 2012)。その結果の要約を下記に提示する。 日本の当事者活動・当事者組織の基盤は、地域社会から隔絶された障害者同士の交流にあり、欧米の活動・組織と関わり、セルフ・アドボカシー活動が導入された。活動・組織の支援内容については研究者から見たとき、支援者は障害者本人との権力関係を自覚する必要があり、本人による意思決定をはじめ、何か行動を起こすように支援することである。一方、障害者本人から見たとき、支援者は本人の思いや行動を受け止めることが必要であると考えていた。活動・組織の成果として、障害者本人の発言権や決定権が増えると、本人が「主体的」になることが挙げられている。課題として「自己決定」が困難な者に対する支援、活動・組織にアクセスが困難な者へのアプローチ、政治場面への参加・参画につながるセルフ・アドボカシー活動を行う活動・組織の拡大があった。 本論文の意義は、知的障害者による当事者活動・当事者組織が日本で活発になって約20年間の、活動史・支援内容・成果・課題を一連の流れとしてまとめたことであり、今後の当事者活動・当事者組織を研究する上での基礎的資料を提示した点にある。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
研究の目的を達成するため、平成23年度(~25年度)は、本研究に関する国内外の先行研究レビューを行うことを計画している。それに沿って、23年度は日本における知的障害者の当事者活動・当事者組織に関する先行文献の分析と整理(古井 2012)を行った。ゆえに、目的の達成に向け、計画通り研究が順調に進展していると考える。 また、23年度~24年度にかけて、先駆的実践を行う「Aの会」の当事者活動・当事者組織による「自立生活プログラム」に関して当事者や支援者が作成した記録の分析、フィールドワークを実施すると計画している。この点についても定期的に行っており、次年度以降、研究結果の公表を予定している。 さらに23年度は、海外でのフィールドワークを行うため「Pacific Rim International Conference on Disability & Diversity」に参加した。今後の研究に活用できる、アメリカでの当事者活動・当事者組織の資料はもとより、障害学の研究状況、学術的知見を得ることができた。
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Strategy for Future Research Activity |
今後も、当初の計画にそって研究を推進する。平成24年度は、研究計画にそって、国内外の先行研究レビューをすすめるとどうじに、「Aの会」の当事者活動・当事者組織の実践について研究成果を公表することを目指す。その中で、知的障害者の当事者活動・当事者組織が考える「自立」の概念、当事者活動・当事者組織における当事者と支援者との関係性、支援の内容、当事者による体験知や技術について検討する。 また、生活史調査の協力者について、倫理的配慮を十分に行った上で選定し、調査を開始する。知的障害者へのインタビューの方法論についても分析・整理を行う。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
平成24年度も引き続き、当初の研究計画にそって研究費を使用する。 次年度使用額(2,240円)は23年度の必要経費の残額であり、24年度の国内外の障害者福祉関連図書に含めて使用する。 24年度の研究成果発表及び資料収集のための学会参加費については、日本ソーシャルワーク学会第29回大会、日本社会福祉学会第60回秋季大会参加のために使用する。 謝金等の経費に関しては、個人情報等を含む資料整理・テープ起こしを行うのに適切な協力者を選定して人件費にあてる。また、適時、生活史調査の協力者などに対する謝金に使用する。
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