2013 Fiscal Year Research-status Report
公正な社会政策の実現に向けた総合的研究:「互酬性」の観点から
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23730524
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Research Institution | Mejiro University |
Principal Investigator |
平野 寛弥 目白大学, 人間学部, 講師 (20438112)
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Keywords | 互酬性 / 相互依存 / ワークライフバランス / 生活時間 / ベーシックインカム |
Research Abstract |
平成25年度においては,当初の計画に沿う形で人々の価値意識や選好,知識に関する公開データを参照し,日本において互酬的関係の醸成を促す政策手法について考察した. 具体的には,内閣府で実施している「国民生活選好度調査」や総務省統計局で実施している「社会生活基本踏査」の結果を分析し,人々の多くがボランティアやコミュニティ活動,市民活動など多様な活動に従事する意欲を持ち合わせている一方で,生活賃金を獲得するための労働に一日の大半を割いており,他の活動に従事する時間的余裕がないこと,また近年の労働の不安定化に伴い賃金確保の重要性が一層増していること,とりわけ生活が不安定な状況においては,社会参加を促進する政策よりも生活の安定をもたらす政策(たとえばより安定的な社会保障制度の構築など)をより強く選好することを確認した.こうした結果を踏まえて,日本において互酬的な関係の醸成を進める上では,賃金獲得のための労働以外の多様な活動に従事するための時間の確保,ならびにこうした多様な活動に参加することを可能にする生活保障の充実,の2点が政策的に推進されるべきだという結論に至った. 以上の研究成果は,英語論文として海外の出版社から刊行予定の書籍に収録されることになっている.また,その内容については学術ワークショップや市民が参加するイベントでも報告を行い(平成25年5月,および同年9月)を行った. また,平成24年度に本研究での成果をまとめて学会誌に投稿し掲載された論文が,学会賞を受賞した(第2回福祉社会学会賞(奨励賞)).
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
理論的検討と実証分析の双方とも計画的に進められていることに加え,理論的な検討の結果をまとめた論文は学会賞を受賞することができ,将来的な研究の発展可能性も含めて評価をしていただくことができた.また,海外の研究者からも注目をしていただき,海外で出版される書籍に拙稿が収録されることになった.いずれも当初の予想を上回る評価をしていただいたとともに,研究成果を国内外の研究者に知ってもらうことができた.以上を考慮すれば,当初の計画以上に進展していると考えられる.
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Strategy for Future Research Activity |
今後は,より詳細に人々の生活における時間配分の現状を分析するべく,生活時間調査の実施を計画している.その際に,生活時間の国際比較調査で使用されている調査項目を使用することで,海外のと日本の相違を明らかにしたいと考えている. これと並行して,多様な活動への参加を可能にする生活保障の在り方についても具体的に検討したい.すなわち,本研究でも検討を続けてきたベーシックインカムを,生活時間の配分に与える影響,ワークライフバランスの促進という観点から分析したい.
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
当初,文献資料の確保と量的調査のためのデータ収集を目途として用意していた予算について,公開データの利用や電子媒体の活用を積極的に行ったこと,また研究に協力してくれた研究者から無償でデータ供与を受けた結果,執行額を当初の予定額よりも圧縮することができ,予算に残額が生じることになったため. 今年度までに本研究から得られた知見の公表に充てることを計画している.具体的には,国内外の学会にて1度ずつ研究成果報告を行うべく,出張に係る費用(交通費および宿泊費)に充てる予定である.
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