2014 Fiscal Year Annual Research Report
公正な社会政策の実現に向けた総合的研究:「互酬性」の観点から
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23730524
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Research Institution | Mejiro University |
Principal Investigator |
平野 寛弥 目白大学, 人間学部, 専任講師 (20438112)
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Project Period (FY) |
2011-04-28 – 2015-03-31
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Keywords | 互酬性 / 社会政策 / 生活時間 / シティズンシップ / 社会的包摂 / ベーシック・インカム |
Outline of Annual Research Achievements |
権利と義務の対応関係を表す互酬性は,近代社会では市民の成員資格たるシティズンシップを規定する規範として機能してきた.このことは社会政策の展開にも影響を与え,高齢者や児童,障害者などが例外的存在として処遇されることにつながっているほか,外国人や移民を同じ社会の構成員として認めずに排除・排斥する事態を引き起こしている. こうした近年の社会の動向をふまえ,前年度までは互酬性の概念構成やそれをめぐる言説の変遷について理論的な検討を進めた結果,現行の「福祉契約主義」と呼ばれる,権利と義務の厳密な対応関係を重視する互酬性のあり方に代わりうる,新たな互酬性としての「多様な互酬性」がもつ可能性(基礎的生活保障の無条件提供,人々の平等な取扱い,時間配分の自由に伴う多様な活動への従事など)を指摘することに成功したほか,これらの研究結果をまとめた論文に所属学会から高い評価を得た(第2回福祉社会学会賞(奨励賞)を受賞). 最終年度は前年度までの研究成果に基づき,人々が様々な活動を通じて互酬的な関係を取り結ぶ包摂的な福祉社会の実現に向けて,生活上の「時間配分の自由(temporal autonomy)」の観点からその実現可能性を検討した. もとより人々が多様な活動に従事するための“時間”が不足しているという現状では,生活上の時間配分の自由を増大させる政策を導入する必要があり,そうした政策案の一つとしてベーシック・インカムが挙げられる.そこで,ベーシック・インカムの導入が物質的な面での貧困の解消につながるのみならず,いかに生活時間の配分の自由を向上させ,ひいては多様な活動への従事を可能にすることで,結果的に人々が様々な活動を通じて互酬的な関係を取り結ぶ包摂的な福祉社会の実現につながりうるかという点について,国民生活選好度調査の結果などを用いて検討を行い,その結果を英語論文としてまとめ,刊行した.
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[Book] Basic Income in Japan: Prospects for a Radical Idea in a Transforming Welfare State2014
Author(s)
Aya K. Abe, Ronald Dore, Sakura Furukubo, Hiroya Hirano, Fumio Iida, Yoshio Itaba , Kaori Katada, Hayato Kobayashi, Shinji Murakami, Julia Obinger, Yuki Sekine, Takashi Suganuma, Toshiaki Tachibanaki, Rie Takamatsu, Yannick Vanderborght, Toru Yamamori, Junko Yamashita
Total Pages
275(247-261)
Publisher
Palgrave Macmillan