2012 Fiscal Year Research-status Report
元ホームレス生活保護受給者の健康・栄養状態の実態把握と食生活支援システムの開発
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23730526
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Research Institution | Kanagawa University of Human Services |
Principal Investigator |
五味 郁子 神奈川県立保健福祉大学, 保健福祉学部, 講師 (80363852)
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Keywords | 食生活 / 地域資源 / 自立支援 / 生活保護受給者 / 地域高齢者 |
Research Abstract |
「食」は生きるうえで最も重要な生活活動の一つである。特に地域で暮らす生活保護受給者や高齢者は様々な要因により「食べること」がおびやかされることがある。一方、地域には住民の食生活をサポートする地域資源が多様に存在しており、個別の食生活状況と地域資源をコーディネートする機能が必要である。 本研究は、(1)地域住民の食生活状況を把握する食生活チェックシートの開発、(2)モデル地域における食生活サポート地域資源の情報の一元化、(3)住民個別の食生活状況に応じて適切な地域資源を紹介するインターネット活用型食生活サポートシステムの構築を目的とし推進した。 (1)食生活チェックシート:食事療法による制限、1日の食事回数、たんぱく質が多い食品や水分の摂取頻度、咀嚼、嚥下、買物、調理、食費負担感等17問を設定し、回答を5段階択一式とした。(2)東京新宿区ならびに神奈川県逗子市をモデル地域として、社協、地域包括支援センター、市役所等が把握している情報、関連機関のホームページ等をもとに、新宿区榎町地域で49件、逗子市で106件の食生活サポート地域資源の情報を収集した。地域資源を①配食サービス、②宅配サービス、③サロン、④教室、⑤栄養食事指導、⑥調理クラブ、⑦地域菜園、⑧ホームヘルパー、⑨デイサービス、⑩送迎サービス、⑪資金管理サービス、⑫歯科医院、⑬総合相談のカテゴリーに分け、食生活チェックシートの各17問に対応するものを割り当てた。(3)食生活チェックシートの回答状況に応じて地域資源を紹介するシステムを設計し、「食生活サポートナビ」(http://shoku-support.com)として構築した。 要介護者向けのサービス以外の地域資源を広く集約し一元化したことにより、生活保護受給者や介護予防高齢者が食事・栄養不足になる早い段階かつ個別の状況に対応した食生活のサポートが可能になる。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
【食生活チェックシートを活用した食生活状況の把握:100%】食生活チェックシートを紙ベースで使用した調査により、生活保護受給者が必要としている食生活サポートが多様であるとともに、複数にわたり食生活チェック項目に該当がある場合には優先順位を考慮する必要があることを確認し、その結果を食生活サポートシステムの設計に組み入れ、活かすことができた。 【食生活支援サービス・地域資源リストの作成:90%】東京新宿区榎町地域で49件、神奈川県逗子市において106件の食生活支援サービスのリストを作成し、カテゴリー分類を行い、各サービス・カテゴリーが食生活のどの課題に対応可能であるかを検討した。逗子市では管理栄養士に繋がる種々のサービスが存在したが、新宿区においては管理栄養士の関与するサービス情報は十分に得られなかった。食生活サポートナビとして、各サービスの情報が公開されるため、各サービスに食生活サポートナビへの理解・協力を要請する必要が生じた。 【食生活サポートシステムの構築:90%】食生活チェックシートの回答結果に基づく地域資源紹介のアルゴリズムおよび地域資源データベースをシステム作成会社に提供、プログラミングを委託し、「食生活サポートナビ」としてシステムを構築した。地域資源を最新版に常時アップデートできるように管理画面を設計した。
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Strategy for Future Research Activity |
食生活支援サービスの一元化および「食生活サポートナビ」としてシステムが開発され、本研究目的の主軸はほぼ達成されたと言える。「食生活サポートナビ」設計段階において新たに対応すべき課題が二点生じた。一点目は、食生活支援サービス情報はインターネット上で公開されるため、食生活支援サービスの提供サイドに当該システムの理解・協力を要請する必要があること。二点目は、食生活チェックシートによって回答が軽度(食生活支援サービスを利用するほどではない)の場合、食生活お役立ち資料を提供できるように食生活チェックシート項目に応じて栄養教育媒体を作成する必要があること。今後、この二点に対応する作業を行い、「食生活サポートナビ」の試験的運用をスタートする予定である。 5~6月に食生活支援サービス提供サイドに当該システムの趣意書および協力承諾書を送付、説明会の開催、5~6月に食生活チェックシート項目に応じた栄養教育媒体の作成、7月に「食生活サポートナビ」のオープンおよび試験的運用を行う。 また、「食生活サポートナビ」の活用推進を担うであろう関係者(社会福祉協議会、地域包括支援センター、地域栄養士等)と意見交換を継続して行う。関連する学会等において本研究の成果を報告する。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
「食生活サポートナビ」を試験運用のため携帯端末・携帯用プリンター機器を複数セットを購入する予定である。また、「食生活サポートナビ」パンフレットの印刷費、食生活支援サービス提供サイドへの書類郵送料、食生活支援サービス提供サイドへの説明会開催費(会場費等)、試験運用のための現地までの旅費を研究費から支出する。さらに、成果報告のための学会参加費および旅費を支出する予定である。
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