2012 Fiscal Year Research-status Report
犯罪加害者家族に関する総合的研究:心理・社会的支援の必要性と可能性
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23730532
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Research Institution | The University of Kitakyushu |
Principal Investigator |
深谷 裕 北九州市立大学, 公私立大学の部局等, 准教授 (60435732)
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Keywords | 犯罪 / 加害者 / 家族 / 司法福祉 / 刑事政策 |
Research Abstract |
本研究の目的は、犯罪加害者家族が置かれている心理的・社会的状況を理解し、彼らに対する支援の必要性と可能性を検討するものである。具体的には、事件により、加害者家族の生活がどのように変化し、それをどのように受け止めているかについて、ライフストーリー・インタビューにより明らかにすることである。 昨年度は調査者が場に馴染むということに時間を費やしたことがあり、インタビューの実績が2件にとどまったが、平成24年度は9件についてインタビューすることができた。これらの調査を通して、昨年度の調査により浮き彫りになった加害者家族の心理的・社会的状況がさらに明瞭になった。具体的には、彼らには司法制度手続き上の情報が圧倒的に不足していること、近隣住民のまなざしを強く意識しており、地域生活の継続を危惧していること、子どもへの説明や関わりに悩んでいること等があげられる。 また、本研究では、犯罪加害者家族に対する支援の仕組み作りに向けて、諸外国で犯罪加害者家族支援を行っている民間団体への聞き取り調査を行うことがもう一つの目的としてある。この点については、平成24年度は香港で受刑者とその家族への支援を実施している民間団体を訪問し、組織構造、他機関連携、サービス内容、課題等について聞き取り調査を実施した。加えて、香港大学の研究者を訪問し、加害者家族の実態調査について意見交換した。 平成24年度の研究により、加害者家族に共通する課題と多様性についての知見が集積された。これらの知見は加害者家族支援の拡充の重要性を示す論拠となる。また、国外調査を通して、日本においても受刑者を親に持つ子どもの実態調査を行い、世代間連鎖の有無と予防の必要性について検討する必要があることが示された。このことは刑事政策と福祉政策の新たな結節点の気づきと解釈することができる。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
平成23年度~24年度を通して、目標を上回る件数のインタビューを実施することができた。しかしながら、インタビューを通して家族の多様性が浮き彫りになり、前もって設定した目標インタビュー数では、家族の心理社会的状況を正確に把握する上で、不十分であることが理解された。また、海外調査については、香港の団体への訪問調査を通して、家族支援の実態を把握することができたが、他国の状況が明らかになっていないため、日本がモデルとして取り入れることのできる方法論に関する知見が不足している。
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Strategy for Future Research Activity |
平成25年度も継続的にインタビュー調査を進め、まとめていく予定である。また諸外国の調査については、台湾およびシンガポールの団体および学識経験者を訪問調査する予定である。これらの国々を対象とする訪問調査は、アジアにおける加害者家族支援のネットワークの構築に寄与するものである。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
平成25年度は、年間を通して複数回のインタビュー調査のために交通費および謝金が必要となる。また、年度半ばに台湾・シンガポール調査(研究代表者および協力研究者の2名)に使用する予定である。
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Research Products
(1 results)