2013 Fiscal Year Research-status Report
犯罪加害者家族に関する総合的研究:心理・社会的支援の必要性と可能性
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23730532
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Research Institution | The University of Kitakyushu |
Principal Investigator |
深谷 裕 北九州市立大学, 基盤教育センター, 准教授 (60435732)
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Keywords | 加害者家族 / 触法 / 犯罪 / 子ども / 司法福祉 |
Research Abstract |
本研究の目的は、犯罪加害者家族が置かれている心理的・社会的状況を理解し、彼らに対する支援の必要性と可能性を検討するものである。 平成25年度は協力予定者の生活状況や心理的状況の悪化により、インタビュー調査の延期を余儀なくされたり、あるいは協力者として適当な方が現れない期間が長く続き、インタビュー実績は4件であった。しかし、加害者家族についての新たな知見が得られた。具体的には、性犯罪の場合の家族の苦悩、家族の居住地域による差異、被害者が家族内にいる場合の心理的負担、支えとなる子どもの存在等である。 また、本研究では、犯罪加害者家族に対する支援の仕組み作りに向けて、諸外国で犯罪加害者家族支援を行っている民間団体への聞き取り調査を行うことがもう一つの目的としてある。この点については、平成24年度は香港の民間団体を訪問したが、平成25年度は予定していた台湾への訪問は行わなかった。その理由として、直前の情報収集により台湾については香港と類似の支援構造をもつ可能性が高いことが明らかになったためである。 一方、昨年度までの海外調査から日本における受刑者を親に持つ子どもの実態調査の必要性が明らかになったため、該当する子どもたちに関わる可能性の高い国内の複数の児童相談所を訪問し、聞き取り調査を行った。その結果、受刑者の子どもたちの問題については見過ごされてきたこと、そして司法機関と福祉機関そして教育機関との連携状況は地域によりかなりの差があることが明らかになった。 平成25年度の研究により、地域にある依存症専門の医療機関や公的機関、学校関係、児童相談所、就労支援機関等が、加害者家族問題を解決するうえで重要な役割を果たすことが示唆された。家族の再生あるいは家族の再統合のためには、家族への支援と触法者本人に対する出所後の支援が同時並行的に行われることが求められ、出所者支援の展開が期待される。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
平成23年度から25年度の調査を通して、加害者家族の心理的・社会的状況に関する知見が集積されてきた。しかし、とくに触法者との親族関係による認識の相違にかかる詳細については明らかになっていない。その理由としては対象者数の不足が挙げられる。本研究ではセンシティブな話題を取り扱うため、対象者の選定には細心の注意を払う必要がある。そのため当初予定していた対象者の都合が悪くなる場合もあり、予定通りにインタビューを進められないケースも少なくない。だが、今後も対象者の状況に配慮しつつ、可能な限り聞き取り調査を進めていく必要がある。 また、日本国内での犯罪加害者家族に対する支援の仕組み作りに寄与すべく、諸外国での取り組みについて考察する点については、制度や仕組みについての知見は集約できつつあるが、諸外国での取り組みをいかに日本に採用し統合させていくかという発展的分析が不十分であり、今後さらに進めていく必要がある。特に子どもの状況については実態の把握と制度的取り組みの可能性について検討が求められる。
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Strategy for Future Research Activity |
平成26年度は、触法者との親族関係による認識についての知見を集めることを主眼に、延期されたインタビュー調査を対象者の状況に配慮しつつ進め、分析を行う。 また、触法者の子どもが置かれている状況やその後の生活、そしてそれに対する制度的取り組みの課題を明らかにする必要がある。そこで、全国の児童福祉施設を対象としたアンケート調査を実施する。オーストラリアや香港などにおける取り組みを参考に、子どもへの支援も含め、日本での加害者家族支援について制度的側面からの展望を考察し、まとめる。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
平成25年度は、インタビュー調査と海外調査を実施する予定であったが、協力予定者の生活状況や心理的状況の悪化により、調査が延期となった。また、平成23年度と平成24年度に実施した研究の結果、親の触法行為や一連の刑事手続きが子どもに及ぼす影響について、日本国内の現状を明らかにすることが、喫緊の課題として示された。そこで、海外調査の予定を変更し、国内の児童福祉施設調査を行うこととしたため、未使用額が生じた。 未使用額は、延期されたインタビュー調査と、全国の児童福祉施設を対象としたアンケート調査の実施のための経費に充てる。具体的には、複数回のインタビュー調査のための交通費および謝金、アンケート調査票の印刷費および郵送費、結果公表のためのパンフレット代として使用する。
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