2011 Fiscal Year Research-status Report
パネル調査に基づく中高年期における配偶関係の変化と精神的健康に関する研究
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23730544
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Research Institution | Jissen Women's University |
Principal Investigator |
原田 謙 実践女子大学, 人間社会学部, 准教授 (40405999)
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Project Period (FY) |
2011-04-28 – 2013-03-31
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Keywords | 精神的健康 / 配偶関係 / パネル調査 / 中高年者 |
Research Abstract |
本研究は、全国の中高年者を対象としたパネル調査に基づき、配偶関係の変化と精神的健康の関連を分析することを目的とする。具体的には、第一に配偶関係(有配偶、死別、離別、未婚)による精神的健康の差異に関する横断的分析、第二に追跡期間中における配偶者との死別が精神的健康に及ぼす影響に関する縦断的分析を行う。本年度は、第一の分析課題について、性差に着目した分析を行った。データは「引退と健康に関するパネル調査」を用いた。 精神的健康の指標としてCenter for Epidemiologic Studies Depression Scale (CES-D)を従属変数とした重回帰分析の結果、男性では、有配偶者に比べて無配偶者(死別、離婚、未婚)ほどCES-D得点が高く、とくに未婚者の心理的ディストレスの高さが示された。女性では、有配偶者に比べて離婚者ほどCES-D得点が高かった。生活満足度を従属変数とした重回帰分析の結果、男性では、有配偶者に比べて無配偶者(死別、離婚、未婚)ほど生活満足度の得点が低かった。女性では、有配偶者に比べて離婚者ほど生活満足度の得点が低かった。 未婚男性や離婚女性の心理的ディストレスの高さが示すように、一括りにされがちな「無配偶者」であっても、その婚姻歴および性別によって精神的健康との関連の仕方は異なっていた。つまり、中高年期において同じ無配偶者でも、離婚や死別によって無配偶になることと、未婚のために無配偶であることは、その意味が異なっている点が示唆される。とくに、離婚を経験した(そして再婚していない)中高年女性については、経済的問題や社会生活上の問題などの要因が精神的健康を低くしている可能性が考えられる。そのメカニズムの詳細を検討していくことが今後の課題である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本年度に予定していた既存データベースを用いた研究は、配偶関係(有配偶、死別、離別、未婚)による精神的健康の差異に関する横断的分析をはじめとして、おおむね達成できた。主要な研究内容は、Ninth Asia/Oceania Regional Congress of Gerontology and Geriatricsにて報告した。研究に必要な図書、消耗品もおおむね揃えることができた。
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Strategy for Future Research Activity |
本年度は、科学研究費からの支出を予定していた海外学会出張について、所属大学内の出張旅費助成を得たため、次年度に繰り越す研究費が発生した。今後は、関連文献の収集を進め、追跡期間中における配偶者との死別が精神的健康に及ぼす影響に関する縦断的分析を中心に行う。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
1.既存データの分析 本年度に引き続き、次年度も「引退と健康に関するパネル調査」データを用いた分析を進める。次年度はとくに配偶者との死別が精神的健康に及ぼす影響に関する縦断的分析を中心に行う。2.文献の収集・整理 パネル調査データ分析の方法、家族関係の変化と健康に関する文献を中心に収集・整理し、本データ分析の考察に活用する。
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Research Products
(1 results)