2013 Fiscal Year Research-status Report
先天性四肢障害当事者の心理社会的支援のニーズに関する生涯発達研究
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23730548
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Research Institution | Shinshu University |
Principal Investigator |
白神 晃子 信州大学, 地域戦略センター, 研究員 (60548238)
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Keywords | 先天性四肢障害 / 当事者 / 心理社会的支援 / 身体 / 主観的障害観 / 軽度身体障害 |
Research Abstract |
研究1では,先天性四肢障害児者の生涯発達過程における困難や支援の現状について,自助団体関係者を対象に相談の多い事項についてヒアリングを行った。発達段階別にまとめると,乳幼児期(医療福祉制度,集団生活の場の選択,本人の障害への気付きと障害開示),学齢期(音楽やスポーツ等の道具利用),青年期(年金や自動車免許等の制度,就職),成人以降(結婚と出産・子育て,親子関係,仕事と就職,身体)の相談が多く寄せられていた。これらの結果をもとにアンケートを作成し,26年度に調査を実施する。 研究2では,2004年から2013年までの機関誌に掲載された当事者の手記を収集した。1年間に平均9件の手記が掲載され,手記掲載数は経年増加傾向にあった。当事者の手記は,日常の体験を通した自身の障害の認識や社会に対する思いをつづった内容が多かった。手記のテーマは音楽が最も多く,ボランティア,スポーツ,就労,子育て,自助団体の活動参加,自動車免許などが取り上げられた。手記の内容からは,障害に対する認識として一部ネガティブな体験も記載されたものの,全般的に肯定的な障害認識が記載されていた。 研究3として,前年度に引き続き当事者への聞き取り調査を行った。特に身体的困難に注目すると,当事者は身体的な不具合を感じているものの,解決に向けた受診行動や自助具の活用および援助要請行動につながりにくいことが明らかになった。受診行動を抑制する要因としては,自身の障害に起因する困難を明確に認識しにくいことが考えられた。自助具の活用を抑制する要因としては,過去の自助具使用時の満足度や有効性が低かったことや,自助具を用いないことに価値をおく生育環境があると示唆された。また,援助要請行動についても,生活動作の自立を求められた生育環境下で,援助要請に消極的な価値観が形成されていたことが示唆された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
25年度は研究2の手記の分析、研究3の当事者インタビューについては計画を実施した。一方、年度途中に研究代表者の所属変更があり,研究1についてはアンケート調査の設計準備まで進んだものの調査実施には至らなかったため「やや遅れ」と評価した。
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Strategy for Future Research Activity |
研究1では,25年度に実施した聞き取り調査の結果をもとにアンケートを設計し,自助団体の親を対象に調査を実施する。 研究3では当事者へのインタビューを継続するとともに,収集したデータの分析を並行して行う。 研究1~3を踏まえて,1)発達段階およびライフイベントに応じて生じる困難,2)先天性四肢障害児者およびその保護者が受けてきた支援とその有効性,3)先天性四肢障害当事者の持つ「体験としての障害」について総括する。 また,研究成果について国内外の学会で報告し,積極的に意見交換を行う。また,対象者に向けても調査結果をフィードバックし,適宜ヒアリングを行う。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
次年度使用額の発生は、研究計画全体の遅れによる。 インタビュー調査及びフィールドワークには主に旅費と謝金、得られた成果を適宜学会等で発表し投稿するための経費、アンケート調査の準備と成果物作成のための印刷費、資料の整理およびデータ分析に係る人件費、データ整理の一部を委託するための費用を支出する。
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