2014 Fiscal Year Research-status Report
先天性四肢障害当事者の心理社会的支援のニーズに関する生涯発達研究
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23730548
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Research Institution | Shinshu University |
Principal Investigator |
白神 晃子 信州大学, 地域戦略センター, 研究員 (60548238)
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Project Period (FY) |
2011-04-28 – 2016-03-31
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Keywords | 心理社会的支援 / 発達に伴う課題 / 心理社会的支援 / 軽度身体障害 / 援助要請 / 障害受容 / 外傷後成長 / 意味づけ |
Outline of Annual Research Achievements |
研究3では、本人を対象としたインタビュー調査の分析を進めた。対象障害では受診行動や援助要請行動を抑制しやすい可能性が明らかになったが、一方で周囲の働きかけを契機として,周囲に手助けを頼むことをポジティブに捉え直す変化が生じた事例が確認された。この事例では、自立的に援助要請を行うことで友人や家族との関係性が好転していた。分析結果から、障害当事者が適切な援助要請ができるよう支援することで,障害当事者の主観的障害観や周囲との関係性を間接的に変容させる可能性が示唆された。 研究1では、聞き取り調査の結果をもとにアンケートを設計し,先天性四肢障害児の親を対象に調査票を郵送した。障害当事者と親への聞き取り調査およびフィールド調査をもとに設定された項目は、1.子育て過程における全般的な課題とサポート、2.特定の発達時期に生じる課題(子どもの出生時の周囲への説明、入園時の困難、本人の障害認知、本人への障害の説明、学校生活における困難経験と相談経験、成人後の不安)、3.親としての子育てにおける意識と成長感であった。発達段階別の困難として、乳幼児期(医療福祉制度,集団生活の場の選択,本人の障害への気付きと障害開示),学齢期(音楽やスポーツ等の道具利用),青年期(年金や自動車免許等の制度,就職),成人以降(結婚と出産・子育て,親子関係,仕事と就職,身体)を想定したが、このうち社会・医療福祉制度や身体上の不具合についての言及が少なかった。一方で困難として多くあげられたのは、道具利用、入園入学に際しての拒否、友人関係におけるいじめやからかい、思春期における本人の障害認識の変化であった。また、親子間で障害について取り上げて話をした経験がなかった、本人からの訴えがなかった、との回答も一定数見られた。次年度にかけて調査票を回収し、分析を進める。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
26年度に親を対象としたアンケート調査を行う予定であったが、聞き取り調査やフィールド調査の過程で「援助要請」や障害の「意味づけ」に関しても情報収集を行い、調査に盛り込む必要性が明らかになった。そのため研究計画全体に遅れが生じた。
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Strategy for Future Research Activity |
研究1にかかるアンケート調査の回収と分析を行う。 本研究事業全体を踏まえて,1)発達段階及びライフイベントに応じて生じる困難,2)先天性四肢障害児・者およびその保護者が受けてきた支援とその有効性,3)先天性四肢障害当事者の持つ「体験としての障害」について総括する。 また,研究成果について国内外の学会で報告するほか、対象者に向けても調査結果をフィードバックし,積極的に意見交換を行う。
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Causes of Carryover |
26年度に親を対象としたアンケート調査を行う予定であったが、「援助要請」や障害の「意味づけ」に関しても情報収集を行う必要性が明らかになった。そのため、アンケート実施の時期が年度末となり、未使用額が生じた
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
このため、アンケートの実施回収までを26年度に行い、補助事業期間を延長してデータ入力および分析を次年度に行うこととし、未使用額はその経費に充てる。
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