2011 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
23730553
|
Research Institution | Chubu Gakuin University |
Principal Investigator |
新井 康友 中部学院大学, 人間福祉学部, 講師 (80369701)
|
Project Period (FY) |
2011-04-28 – 2013-03-31
|
Keywords | 孤立死 / 孤独死 / 独居死 / 地域包括支援センター / 民生委員 / 困難事例 |
Research Abstract |
A県Bニュータウンで無料配布されているコミュニティ誌(フリーペーパー・週1回発行)の記事をチェックし、Bニュータウンで起きた孤立死の実態やその地域の特徴を把握した。現在、厚生労働省は孤立死の定義付けを行っているが、そのことばや定義は定着していない。そして、孤立死に類似することばとして、孤独死、独居死があるが、どれも明確な定義が決まっていない。そこで平成23年度は、孤立死・孤独死・独居死の定義を提唱している者の定義内容を整理した。それぞれの定義のカテゴリーを見て、孤独死の定義の提唱者が孤独死問題をどのように捉えているかを明らかにした。そして、それぞれの定義の内容をみると、(1)単身世帯に限定するか、それとも世帯類型を問わないか、(2)社会的に孤立した状態を要件にするかどうか、(3)孤独死などに自死(自殺)を含めるかどうか、(4)死後、発見されるまでの期間を要件に含めるかどうか、の主に4つカテゴリーで構成されていた。 また、ある4県すべての地域包括支援センター429カ所を対象に、緊急対応事例や孤立死事例に関するアンケート調査を実施し、164カ所から回答を得た(回収率38.2%)。その結果、高齢者の孤立死事例の経験があると回答したセンターは約2割にとどまったが、「緊急性の高い事例」「緊急性はないが出来る限り早い時期に何らかの手だてが必要な事例の経験がある」と約8割のセンターが回答しており、孤立死予備軍になる可能性がある高齢者が多数いることを明らかにした。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
厚生労働省は現在、孤立死などの実態調査を行っていない。その理由としては、孤立死、孤独死、独居死などさまざまなことばが使用され、定まった定義がないことがその1つの理由である。そこで平成23年度は、孤立死・孤独死・独居死の定義を提唱している者の定義内容を整理した。それぞれの定義のカテゴリーを見て、孤独死の定義の提唱者が孤独死問題をどのように捉えているかを明らかにすることができた。また、平成23年度は、厚生労働省が使用している「孤立死」ということばで、「社会から『孤立』した結果、死後、長期間放置されるような死」という定義を用いて実態調査を行った。調査方法としては、ある4県のすべての地域包括支援センターへのアンケート調査を行った(回収率38.2%)。今回の調査で、すべての孤立死の実態把握ができたとは言えないが、ある一定の地域で起きた孤立死の実態について把握できたことは大きな研究成果である。さらに地域包括支援センターが把握している孤立死事例の具体的内容についても調査依頼したため、孤立死発見時の状況、孤立死発見の経緯などに関するデータを得ることができた。また、ゴミ屋敷などで暮らす孤立死予備軍になる可能性がある高齢者の生活実態(緊急対応事例)についての具体的内容についても調査した。本年度は、緊急対応事例、孤立死事例のデータが収集することができ、非常に貴重な事例を獲得することができた。上記の結果から、「(2)おおむね順調に進展している。」と自己評価した。
|
Strategy for Future Research Activity |
平成23年度は、孤立死事例の具体的な内容について把握することができた。そこで平成24年度は、孤立死対策の方法について研究する。そこで平成24年度前半は、孤立死対策の実践活動事例の調査を行う。孤立死対策の実践活動事例は、必ずしも直接、孤立死予防活動を主な目的にしている活動だけではなく、実践活動を通して孤立死予防活動に繋がっているものも調査対象にする。先進的な実践事例を分析し、どのような活動内容が孤立死予防に役立っているかを探る。しかし、孤立死対策の実践活動と言っても、大きく(1)孤立死予防対策、(2)孤立死早期発見対策の2つに分けられる。今回の調査では、(1)孤立死予防対策、(2)孤立死早期発見対策が混乱しないように整理しながら、孤立死対策の実践活動の分析を行う。現在、調査対象先は以下の4つの活動を予定している。(1)男性ボランティアによる喫茶活動「ボランティアグループこぶし」(堺市南区三原台)、(2)軒先に造花のバラを掲げ・安否確認を行う活動(京都市下京区亀屋町)、(3)西成医療生活協同組合千本北支部のモーニング班活動(大阪市西成区)、(4)まつど孤独死予防センター(千葉県松戸市)。他によりよい活動がある場合は調査対象に追加する予定である。平成24年度後半は、平成23年度後半と平成24年前半に行った調査結果のまとめを行い、報告書を作成する。
|
Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
平成24年度は、孤立死対策の方法について研究する。そして、孤立死対策の実践活動事例の調査を行う。そのため、現地調査が多くなり、旅費が多くかかる事が予想される。そして、現地調査の結果をまとめるため、データ整理などを行ってもらう研究補助員への謝金も想定している。さらに社会的孤立や孤独死に関して先進的研究をしている河合克義教授(明治学院大学)や小川栄二教授(立命館大学)から分析方法に関するスーパーバイズを受けるための旅費として使用する予定である。 また近年、孤立死が社会問題になってきたため、孤立死に関する研究も取り組みまれ始めた。そして、孤独死関連の図書も多く出版されたり、研究論文も増えてきた。そのため、先行研究をレビューするためにも図書費の確保、文献複写費の確保をしている。今年度が研究期間の最後の年度であるため、これまでの研究成果をまとめるため、印刷製本費も確保している。上記の通り、研究費の予算内で研究を行う予定である。
|
Research Products
(1 results)