2011 Fiscal Year Research-status Report
知的障害のある人の自己決定における支援者および家族による適切な関わりに関する研究
Project/Area Number |
23730559
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Research Institution | Osaka University of Human Sciences |
Principal Investigator |
與那嶺 司 大阪人間科学大学, 人間科学部, 准教授 (90341031)
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Project Period (FY) |
2011-04-28 – 2014-03-31
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Keywords | 知的障害 / 自己決定 / 共同決定 |
Research Abstract |
平成23年度においては、当初計画されていた「知的障害のある人の自己決定への支援者および家族の関わりに関する文献調査」および「知的障害のある人の自己決定への支援者の関わりについての個別インタビュー調査」を一部実施した。 まず、文献調査においては、知的障害ある人の自己決定が、支援者や家族の観点からも、本人だけによる決定ではなく、本人との関わりのある他者との「共同決定」である点があらためて確認された。とくに、重度の知的障害のある人の自己決定においては、その本人と関わりのある複数の他者(支援者、家族、近隣住民等)によって「共同決定」がなされていることが明らかとなった。ただし、本調査の途中段階ではあるが、軽度知的障害のある人の自己決定については、支援者や家族がどの程度まで、または、どのように関与しているのかが明瞭となる文献は少なかった。 また、知的障害のある人の自己決定への支援者の関わりについての支援者に対する個別インタビュー調査においては、まだ途中段階ではあるが、3名の熟練の支援者にインタビューを実施し、知的障害のある本人の意思の尊重、自己決定を促進するための多様な体験を増やす等の取り組み、知的障害のある本人の好みや嗜好等を考慮した他者による決定等の現状が明らかとなった。これらは、これまで本研究者が実施した文献調査や量的調査の結果に一定呼応するものであると考えられる。もちろん、これらは暫定的な結果であるが、次年度以降の支援者に対する追加調査によりより明瞭な結果が得られると想定している。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
平成23年度における研究の進捗については、他の学術振興会科学研究費や厚生労働科学研究費等の兼ね合いにより、当初予定されていた時間等を費やすことが難しかったことが挙げられる。 また、「知的障害のある人の自己決定への支援者および家族の関わりに関する文献調査」については、関連するデータベースにおける「知的障害のある人の自己決定」というキーワード検索では、とくに問題がなかったが、そのキーワードでは検索できない、かつ本テーマに関連する広範囲な文献を収集しようと試みたため、予定していた時間を越えてしまい、研究計画年度をまたぐ(平成24年度に継続実施となる)結果となってしまった。また、関連する英文献については、その検索が可能なデータベースが身近になかったこともあり、十分な文献レビューが行えなかった。 加えて、知的障害のある人の自己決定への支援者の関わりについての個別インタビュー調査では、知的障害分野においてある程度熟練の支援者を探していたため、その条件に合致した調査対象者を見つけることに予定以上の時間を要した。その結果、計画していた8名の対象者を大幅に下回り、3名の支援者に対するインタビュー調査の実施となった。
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Strategy for Future Research Activity |
今後の研究の推進方策としては、平成23年度に完遂していない「知的障害のある人の自己決定への支援者および家族の関わりに関する文献調査」および「知的障害のある人の自己決定への支援者の関わりについての個別インタビュー調査」を継続して実施することを前提とする。 また、平成24年度の研究計画で予定されていた「知的障害のある人の自己決定への家族の関わりについての個別インタビュー調査」を加えて実施する予定である。ただし、この調査については、本研究の時間的な制約を考慮し、また、調査対象等を勘案し、「知的障害のある人の自己決定への支援者および家族の適切な関わりについてのフォーカス・インタビュー調査」と同時に実施する。 加えて、「支援者および家族の自己決定への効果的な関わりについての先駆的研究および実践に関する海外ヒアリング調査」を実施する。本調査では、米国のミネソタ大学やカリフォルニア州を中心としたヒアリング調査を実施する予定である。そこでは、知的障害のある人の自己決定における支援者および家族の自己決定への効果的な関わりについてヒアリング調査を実施したい。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
平成23年度の繰り越し分を含めたおおよそ1,050,000円について、平成24年度においては、以下のような研究費の使用を計画している。 まず、平成23年度の実施を完了する予定であった「知的障害のある人の自己決定への支援者および家族の関わりに関する文献調査」および「知的障害のある人の自己決定への支援者の関わりについての個別インタビュー調査」を継続して実施する。具体的には、追加の文献調査として、主に英文献の収集が必要となる。また、インタビュー調査についても複数名の支援者に対して実施し、謝金はもとより、そのテープ起こし等においても日費用が必要となる。そのため、物品費、旅費、人件費、謝金等として250,000円程度を使用する予定である。 また、知的障害のある人の自己決定への支援者および家族の適切な関わりについてのフォーカス・インタビュー調査」では、インタビュー対象者への謝金や調査データに関連したテープ起こしの費用はもとより、本インタビュー調査における調査員への謝金等を費用として想定している。そのため、物品費、旅費、人件費、謝金等として、350,000円程度を使用する予定である。 そして、「支援者および家族の自己決定への効果的な関わりについての先駆的研究および実践に関する海外ヒアリング調査」では、アメリカにおける先駆的研究および実践についてヒアリング調査を実施する予定である。そこで、本研究に関連する研究者、支援者、そして家族に対してヒアリングを行う。そのため、物品費、旅費、謝金等で350,000円程度を支出する予定している。 加えて、上記の調査全般に関連して、設備備品等、消耗品費、そしてその他の研究経費として、100,000円程度を想定している。
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