2012 Fiscal Year Research-status Report
知的障害のある人の自己決定における支援者および家族による適切な関わりに関する研究
Project/Area Number |
23730559
|
Research Institution | Osaka University of Human Sciences |
Principal Investigator |
與那嶺 司 大阪人間科学大学, 人間科学部, 准教授 (90341031)
|
Keywords | 知的障害 / 自己決定 / 共同決定 |
Research Abstract |
平成24年度においては、前年度から継続している「知的障害のある人の自己決定への支援者および家族の関わりに関する文献調査」および「知的障害のある人の自己決定への支援者の関わりについての個別インタビュー調査」を実施した。また、「知的障害のある人の自己決定への家族の関わりについての個別インタビュー調査」についても一部であるが実施した。 まず、文献調査では、知的障害のある人の自己決定が、本人だけによる決定ではなく、本人と関わりのある複数の他者(支援者、家族、近隣住民等)とともに「共同決定」がなされている点が再度確認された。また、文献においては、このような「共同決定」の考え方も踏まえ、「自己決定」という言葉は適切でなく、「意志決定」とすることが望ましいとする指摘もなされている。加えて、本文献調査において、知的障害のある人の自己決定を支援する際、再度ノーマライゼーションの概念を整理し検討することにより、その支援のあらたな方向性を見出すことが可能である点が示唆された。ただし、前年度同様、自己決定支援における支援者や家族の具体的な関わりやその程度に関する文献は、あまり見ることはできなかった。 また、支援者の関わりについての個別インタビュー調査については、あらたに3名の支援者に対して行った。そこでは、前年度同様、自己決定支援において、知的障害のある人の多様な経験を増やす取り組みや本人の好みや興味等に留意した関わりが重要である点等が指摘された。また、家族への調査においては、一家族について、個別インタビューを実施した。そこでは、家族としてともに生活を送る中で、必ずしも知的障害のある本人の自己決定をそのまま受け止めることが難しい状況が明らかとなった。 これらの調査はなおも継続中であるため、今後の本研究の調査結果も含めて整理し分析する必要があると考えている。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
4: Progress in research has been delayed.
Reason
平成24年度における研究の進捗状況については、昨年度同様、他の学術振興会科学研究費や厚生労働科学研究費等の兼ね合い等のため、また、本務大学における業務等のため、当初予定されていた時間等を十分に費やすことができなかった。 具体的には、平成24年度は、初年度に計画していた「知的障害のある人の自己決定への支援者および家族の関わりに関する文献調査」および「知的障害のある人の自己決定への支援者の関わりについての個別インタビュー調査」については、一定実施できている。ただ一方で、本年度に実施が予定されていた「知的障害のある人の自己決定への支援者および家族の適切な関わりについてのフォーカスグループ・インタビュー調査」については、前年度実施予定であった調査において収集されるべきデータが十分揃わなかったなかったこともあり、結果的に実施できなかった。また、これについても本年度実施する予定であった、効果的な関わりについての先駆的研究および実践に関する海外ヒアリング調査についても、海外で調査を行うための一定期間の日程を計画的に確保することが難しかったと考えられる。
|
Strategy for Future Research Activity |
今年度の研究の推進方策としては、これまでの調査においても十分ではない「知的障害のある人の自己決定への支援者の関わりについての個別インタビュー調査」について、すでに調査対象者には事前の依頼を終了しているため、年度早めの実施を計画している。また、昨年度実施できていなかった海外ヒアリング調査については、本年度の本務大学の夏季休暇期間を活用し、事前に他業務等との調整を行い、優先的に本調査を実施する予定である。加えて、「知的障害のある人の自己決定への支援者および家族の適切な関わりについてのフォーカスグループ・インタビュー調査」については、調査計画と異なり他調査を実施後となるが、秋から冬にかけての期間で調査対象者も確保し実施したい。 加えて、最終年度である平成25年度は、暫定版ではあるが、提言を加えた知的障害のある人の自己決定への支援者等の適切な関わりに関するガイドラインを作成する。
|
Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
平成24年度の繰り越し分を含めたおおよそ1,300,000円については、以下のような研究費の使用を平成25年度において計画している。 まず、一定程度遂行されているが、まだ継続して実施する予定である「知的障害のある人の自己決定への支援者の関わりについての個別インタビュー調査」において、さらに複数名の支援者への謝金およびテープ起こし等の費用として、200,000円程度を使用する。また、「知的障害のある人の自己決定への家族の関わりについての個別インタビュー調査」についても、謝金およびテープ起こし等の費用として、250,000円程度を使用したい。加えて、あらたに「知的障害のある人の自己決定への支援者および家族の適切な関わりについてのフォーカスグループ・インタビュー調査」を実施し、その際、支援者および家族に対する謝金とテープ起こし等の費用として、250,000円程度の支出を予定している。 また、アメリカを含めた北米における先駆的研究および実践についてのヒアリング調査についても平成25年度に実施し、本研究に関連する研究者、支援者、そして家族に対してヒアリングを行う。そこでの費用として、物品費、旅費、謝金等が想定され、ここで400,000円程度を使用する予定である。 これらの支出に加え、進捗状況によっては必要となるであろう追加の文献調査、あるいは、研究全般において必要となる可能性のある物品費やその他経費等として、200,000円程度の支出を想定している。
|
Research Products
(1 results)