2011 Fiscal Year Research-status Report
知的障害者の協議への参加を促す支援構造:ガバナンス概念による自立支援協議会の分析
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23730562
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Research Institution | Kansai University of International Studies |
Principal Investigator |
笠原 千絵 関西国際大学, 教育学部, 講師 (60434966)
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Project Period (FY) |
2011-04-28 – 2013-03-31
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Keywords | 知的障害 / 参加 / 協議 / 自立支援協議会 / 障害者 |
Research Abstract |
本研究の目的は、障害者の協議場面への参加について、(1)障害者および関係者による現状認識、(2)促進のための具体的方策の2点を明らかにすることである。平成23年度は文献研究と自立支援協議会関係者へのインタビュー調査を行い、ローカルガバナンスの場において利害関係者が活用する資源(例:知識、能力、組織等)という観点から分析した結果、以下が明らかになった。 (1)について、障害者の知識や経験、立場に期待するのは、優先課題の検討、市民啓発、サービス評価などであり、障害者の参加が少ない協議会では、障害者を緊張感を与える存在と位置付ける。参加に必要な能力には、要望中心ではなく多様な観点から協議できる力、リーダーシップ等がある一方、発言力が強いと警戒されやすい。代表性の観点から、個人より三障害の当事者団体の代表が選ばれやすく、地域によっては組織率の低さ、特定事業所の利用者による当事者団体への限定、自立生活運動の未定着等が課題である。障害者の大半はサービスを利用していないため、今後は一般就労の軽度障害者、若い障害者等の参加が必要となる。 (2)について、支援者および自治体担当者は障害者に一定の能力を求める一方、自らの力量や認識が大きく影響することも自覚している。現実的課題である協議の効率化と、障害者の参加を両立させるため、当事者部会の設置が進められている。知的障害者の参加に向けた具体的取組も手探りながら始まり、形式的参加に留めないよう慎重な手続きと支援が必要である。組織間の利害関係や協議会の目標設定、地域の特性と協議会の成り立ちも障害者の参加に影響を与えるため、事前に考慮しておくとよい。 本研究で明らかにした経験、課題、具体的取組は、今後障害者の参加を前提とした自立支援協議会の法定化に向けて参考となる。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
2つの研究目的の達成に向け、おおむね順調に進展しているが、継続的な調査が必要である。理由の第1は、予定していた地域での調査が延期になったためであり、平成24年度の実施で合意している。第2は質的調査の特徴である「データ収集と分析の同時進行」から生じる課題である。大枠はみえてきたが、前述した理由によりデータが不足しているため、理論的飽和には至っていない。また「地域特性」という新たな要因があるため、さらにデータが必要である。今年度は論文、学会報告といった成果の公表には至らなかったが、データ収集と分析が終了すれば順次取り組む。
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Strategy for Future Research Activity |
(1)継続的な調査の実施:平成23年度の調査結果をふまえ、とりわけ知的障害者の協議への参加を促進する具体的方法に焦点をあてて調査を進める。また延期した地域での調査、その後の動向と不足していた項目について継続的な調査を実施する。必要に応じて調査項目の修正を行い、異なる地域を対象に加えることも検討する(8月~9月)。(2)参加の促進に関する海外の専門機関での調査:協議や研究への参加がより難しい知的障害者への支援方法について、先進的な取り組みを参考にするため、英国ブリストル大学Norah Fry Research Centerで、調査結果へのコンサルテーションと情報収集を予定している。同センターは知的障害に関する学際的研究機関であり、さまざまな場面に知的障害者の参加を進めるためのコースを置く。コースに参加し、調査で指摘された協議への参加や支援方法の限界について、具体的な助言および最新の情報を収集する(10月または3月)。(3)研究の総括と報告書の作成:これまでの文献研究および調査を通して、参加を具体化させるためのプロセスと必要な支援、自立支援協議会に障害者の参加が与えた影響について結論を得る(3月)。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
(1)国内調査:昨年度未実施分の地域とあわせ、5回を予定。謝礼はインタビュー協力者1人1回あたり3千円×5人×5回=7.5万円、テープ起こし1.5時間につき20,000円×5回=10万円、旅費2万円×5回=10万円、合計27.5万円(2)海外調査:10日間程度の日程で実施できるよう、所属機関の規程に基づき必要な費用を算出。旅費15万円、宿泊費2.2万円×10日=22万円、コンサルテーション費用13万円、資料整理・テープ起こし2万円×10回=20万円、研究補助(現地での資料整理、収集、通訳等)2万円×7日=14万円、合計84万円(3)文献追加購入、報告書作成と郵送、文具等 合計26万円
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