2012 Fiscal Year Annual Research Report
知的障害者の協議への参加を促す支援構造:ガバナンス概念による自立支援協議会の分析
Project/Area Number |
23730562
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Research Institution | Kansai University of International Studies |
Principal Investigator |
笠原 千絵 関西国際大学, 教育学部, 准教授 (60434966)
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Keywords | 知的障害 / 参加 / 協議 / 自立支援協議会 / ガバナンス / 代表性 / 当事者活動 |
Research Abstract |
障害福祉関係者が地域の課題、連携や支援方法を協議する自立支援協議会では、多様な関係者の考えや力が複雑に働いている。協議会が障害者の生活について協議する場であれば、障害者の参加をより積極的に進める必要がある。しかし筆者の行った調査によれば、身体障害者を委員に選出すれば障害者の「参加あり」とみなし、知的障害者や精神障害者の協議場面への参加を想定していない場合が多い。また選出方法の不透明さや代表性に疑問が残る。そこで本研究では、(1)障害当事者および関係者による協議場面への参加条件の認識(例:資源、能力、役割等)、(2)協議場面への障害者の参加を進める具体的方策の2点を明らかにすることを目的とし、自立支援協議会関係者への半構造的インタビューと、ブリストル大学ノラフライ研究所での情報収集および「知的障害者パートナーシップボード」2カ所で関係者へのインタビューを行った。 自立支援協議会において、障害者は当事者の視点という代替不可能な資源をもつものの、リーダーシップ、代表者としての発言といった参加の条件を満たさないことが多いとみなされる。支援者は関係者への根回しや調整といった能力で参加を促そうとするが、組織の代表として迅速な結果を得るという目的を優先せざるを得ず、参加に向けた支援を当事者活動や組織に期待する。参加を通してとりわけ知的障害者の発言権や決定権を増やすためには、代表としての協議への参加、代表選出のプロセスの明確化、参加機会の複数確保(例:当事者代表、プロジェクト、公聴会)、参加の準備(例:議題の説明と分かりやすい資料準備、協議前の当事者間での合意形成、発言や議論の練習)、協議内容の報告と共有などの方法がある。政策指針として当事者活動を活発化させると、本来の当事者性が奪われるという逆説的な課題がうまれることに注意が必要である。
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