2011 Fiscal Year Research-status Report
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23730564
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Research Institution | Seinan Gakuin University |
Principal Investigator |
大西 祥惠 西南学院大学, 人間科学部, 准教授 (70527689)
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Project Period (FY) |
2011-04-28 – 2014-03-31
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Keywords | 社会的排除 / 社会的包摂 / 福祉施策 / 就労施策 / 地域施策 / 地方自治体 / 無料職業紹介 |
Research Abstract |
平成23年度は、まず、地方自治体による無料職業紹介事業の先進地域などに赴いて情報収集などを行った。具体的には、日本で初めて無料職業紹介事業を開始した地方自治体の一つである大阪府和泉市に平成23年8月26日におうかがいし、事業開始当時の担当者や現在の担当者にインタビュー調査を行った。また、民間委託などの手法を用いながら無料職業紹介事業をうまく運営している福岡県古賀市に平成24年3月2日におうかがいし、担当者の方に事業の運営状況などについてのインタビュー調査を行った。さらに、数年前より無料職業紹介事業の導入を検討している滋賀県湖南市、甲賀市に平成23年10月3日におうかがいし、無料職業紹介事業を実施するにあたっての地方自治体にとっての課題についてのインタビュー調査を行った。 次に、地方自治体に対するインタビューで得られた知見や、その後電話でのさらなる情報収集などを経てアンケート調査票を作成し、全国の地方自治体によって開設されている無料職業紹介所331か所に対して、平成24年1月~2月にかけて悉皆のアンケート調査を実施した。その結果178票を回収することができ、現在は集計、分析に取り組んでいる。 さらに、地方自治体による無料職業紹介事業についての文献・論文や新聞記事などを収集し、分析を進めた。その成果の一部は、論文「地方自治体による無料職業紹介事業についての一考察」(西南学院大学人間科学部『西南学院大学人間科学論集』第7巻第2号、平成24年2月)としてまとめている。また、社会的包摂、就労施策と福祉施策の結びつき方に関する国内外の先行研究などの収集も進めた。 また、情報収集のために、平成23年5月に第122回社会政策学会(於:明治学院大学)、平成23年10月に第123回社会政策学会(於:京都大学)、2011年10月に第23回労働社会学会(於:九州産業大学)に参加した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究の目的は、就労施策と福祉施策の結びつき方について、既存の理論的研究を視野に入れつつ、実証的研究を行うことによって、今後の日本における社会的包摂を目的とした地域政策の在り方に関する提言を行うことであった。具体的には、地方自治体による無料職業紹介事業を事例として検討を進めている。平成23年度は、3年計画の本研究の初年度であったが、現在までの達成度はおおむね順調に進展していると評価することができる。その理由について次に記載する。(1)情報収集のためのインタビュー調査を行った:地方自治体による無料職業紹介事業について、この事業の先進地域を訪問しインタビュー調査を行った。また、この事業の導入を検討している地方自治体や、民間委託の手法を導入することなどによって成果を上げている地方自治体に対してもインタビュー調査を行った。それにより、この事業の成果と課題に加えて、この事業のなかにみられる就労施策的な部分と福祉施策的な部分とのかかわりについての情報を得ることができた。(2)全国331か所の無料職業紹介所へのアンケート調査を実施した:インタビュー調査で得られた情報等に基づいてアンケート調査票を作成し、全国の地方自治体によって開設されている無料職業紹介所331か所に対して、悉皆のアンケート調査を実施した。その結果178票を回収することができ、集計・分析の作業に取り組んでいる。(3)既存研究の収集や分析を進め、研究成果の一部を発表した:地方自治体による無料職業紹介事業についての文献・論文や新聞記事などを収集し、分析を進め、その成果の一部を論文として発表した。また、社会的包摂、就労施策と福祉施策の結びつき方に関する国内外の先行研究などの収集を進めるとともに、社会政策学会や日本労働社会学会に参加することによって情報収集ができている。
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Strategy for Future Research Activity |
今後の研究の推進方策については、次のようになっている。(1)平成23年度に実施したアンケート調査の集計・分析を進め、無料職業紹介事業の類型化を行う。その際、社会的包摂のあり方、就労施策と福祉施策の結びつき方の特徴が浮き彫りになるような類型化を心がける。この類型化に基づいて、全国でも代表的な事業を行っている地方自治体による無料職業紹介所を選択する。そして、この事業によって社会的包摂がどの程度可能になったのかを把握したり、この事業における就労施策と福祉施策の結びつき方を詳細に把握したりするなど、インタビュー調査で解明すべき点を整理したうえで、調査依頼を行い、インタビュー調査を実施する。(2)アンケート調査やインタビュー調査などを通して得られた知見を理論的に整理したり、考察を深めていくために、社会的包摂や社会的排除の理論、社会的包摂のための施策や社会的排除を克服するための施策、また就労施策と福祉施策の結びつき方に関する国内外の先行研究、その他の先行研究、関連する文献資料・各種官庁統計などを収集し、批判的検討や分析を進める。(3)アンケート調査やインタビュー調査などを通して得られた知見を公表していく。すでに平成23年度に地方自治体による無料職業紹介事業についての文献・論文や新聞記事などを収集し、分析を進め、その成果の一部を学術雑誌の論文にしているが、平成24年度以降、さらなる学術雑誌への論文の執筆と学会などでの発表をめざしていく。(4)研究から得られた地方自治体による無料職業紹介事業の社会的包摂機能について、無料職業紹介事業の類型ごとに明らかにし、その就労施策と福祉施策の結びつき方について詳細に解明する、その際、無料職業紹介事業ごとの比較検討の視点についても重視する。そして、日本における社会的包摂を目的とした地域政策のあり方について提言を行う。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
本研究の期間は平成23年度~平成25年度となっている。次(平成24)年度と次々(平成25)年度の研究費の使用については、次のように計画している。 第一に、先行研究について学ぶための社会的包摂、就労・福祉施策関係外国語図書、同じく日本語図書の購入や、調査結果を記録したり、保存したりするための紙、ファイル、USBフラッシュメモリ、研究を遂行するにあたっての文房具の購入を目的に、物品費として、平成24年度に9万3000円、平成25年度に9万2000円、使用する予定にしている。 第二に、インタビュー調査を行うために地方自治体の無料職業紹介所やその担当者を訪問すること、また、研究上の情報収集を行ったり、研究成果を発表したりするべく学会や研究会などに参加することを目的に、旅費として、平成24年度に23万1000円、平成25年度に16万5000円、使用する予定にしている。平成25年度よりも平成24年度の方が額が大きい理由は、インタビュー調査を平成24年度を中心に実施する予定だからである。 第三に、アンケート調査の集計やインタビュー調査の際の音声データの文字おこしを行ったりすることを目的に、人件費・謝金として、平成24年度に6万6000円、平成25年度に3万3000円、使用する予定にしている。平成25年度よりも平成24年度の方が額が大きい理由は、平成24年度にはアンケート調査の集計・分析とインタビュー調査の分析の両方を行うが、アンケート調査の集計については平成24年度中に終了する計画となっており、平成25年度はインタビュー調査のみを行う予定だからである。 第四に、調査を実施するために地方自治体の無料職業紹介所やその担当者を訪問する際の連絡や、資料の郵送などを行うことを目的に、その他通信費として、平成24年度に1万円、平成25年度に1万円の使用を予定している。
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Research Products
(1 results)