2012 Fiscal Year Research-status Report
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23730564
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Research Institution | Seinan Gakuin University |
Principal Investigator |
大西 祥惠 西南学院大学, 人間科学部, 准教授 (70527689)
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Keywords | 社会的排除 / 社会的包摂 / 福祉施策 / 就労施策 / 地域政策 / 地方自治体 / 無料職業紹介 |
Research Abstract |
平成24年度の研究実績の概要は以下の通り。 第一は、昨年度実施した全国の地方自治体によって設置されている無料職業紹介所331か所へのアンケート調査結果を集計し、分析に取りかかった。回収された約180票のアンケート調査結果をspssに入力し、集計を行い分析を行った。分析した研究成果は、11月16日~18日に開催された日本労働社会学会において報告した(於:聖心女子大学)。 第二は、前述のアンケート調査の分析結果に基づいて、全国の地方自治体によって設置されている無料職業紹介所の類型化を行った。社会的包摂の在り方、就労施策と福祉施策の結び付き方の特徴が浮き彫りになるような類型化を行うよう試みたうえで、うち全国でも取り組み課題として多くみられた、就職困難層を主たる対象とする無料職業紹介所、定住促進を主たる対象とする無料職業紹介所等に対するインタビュー調査を実施した。調査の日程と場所は、3月4日に大阪府和泉市無料職業紹介センター、3月7日に兵庫県宝塚市無料職業紹介センター、3月12日に神奈川県障害者就労相談センター無料職業紹介センター、3月15日に岡山県津山広域事務組合津山圏域無料職業紹介センター、3月26日に島根県江津市無料職業紹介センターである。それぞれのセンターにおいて、無料職業紹介事業に取り組むことになった経緯と、取り組むことによる成果、取り組むことによって明らかとなった課題、福祉施策と就労施策との結び付き方などについて明らかにするために無料職業紹介事業と連携している他の施策などについてのインタビュー調査を行った。 第三に、情報収集のために5月26日~27日に開催された社会政策学会に参加し、本研究と関連するテーマについての学びを深めた(於:駒澤大学)。 それに加えて、本研究を進めるにあたり必要な先行研究について学ぶために、社会的包摂、就労・福祉施策などに関する図書を入手した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究の目的は、就労施策と福祉施策の結び付き方について、既存の理論的研究を視野に入れつつ、実証的研究を行うことによって、今後日本社会における社会的包摂を目的とした地域施策の在り方に関する提言を行うことであった。具体的には、地方自治体によって実施されている無料職業紹介事業を事例に検討を進めている。平成24年度は、3年計画の2年めであったが、現在までの達成度はおおむね順調に進展していると評価することができる。その理由は次の通りである。 (1)前年度実施したアンケート調査結果を分析し、無料職業紹介事業の類型化を行った:前年度実施した全国の無料職業紹介事業を実施している地方自治体に対するアンケート調査の集計、分析を行い、おおよその無料職業紹介事業の類型化を行っている。就職困難層を主たる対象とする事業(生活保護受給者を対象とした事業を含む)、地域的に定住促進(U・I・Jターンなど)を主たる目的とする事業、地域的に医療・福祉専門職の不足の解消を目的とする事業などに分けることができる。 (2)類型化に基づいてインタビュー調査を行った:類型化のなかから就職困難層を主たる対象とする無料職業紹介所と定住促進を主たる目的とする無料職業紹介所のなかで、高い成果を上げているところを中心に、大阪府和泉市無料職業紹介センター、兵庫県宝塚市無料職業紹介センター、神奈川県障害者就労相談センター、岡山県津山広域事務組合津山圏域無料職業紹介センター、島根県江津市無料職業紹介センターにおいてインタビュー調査を実施することができた。 (3)既存研究の収集や分析を進め、研究成果の一部を発表した:社会的包摂を目的とした地域政策に関する研究や資料を収集し、分析を進めた。それに加えて、上述アンケート調査結果の分析を行い、11月16日~18日に開催された日本労働社会学会において報告を行った(於:聖心女子大学)。
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Strategy for Future Research Activity |
今後の研究の推進方策については、次のようになっている。 (1)引き続きインタビュー調査を実施する。具体的には、就職困難層を主たる対象とする事業(生活保護受給者を対象とした事業を含む)、地域的に定住促進(U・I・Jターンなど)を主たる目的とする事業、地域的に医療・福祉専門職の不足の解消を目的とする事業などについてのインタビュー調査を進め、地方自治体による無料職業紹介事業の現状や課題を明らかにし、その社会的包摂のための機能などについての検討を行う。 (2)アンケート調査やインタビュー調査などを通して得られた知見を理論的に整理したり、考察を深めたりしていくために、社会的包摂や社会的排除の理論、社会的包摂のための施策や社会的排除を克服するための施策、また就労施策と福祉施策の結び付き方に関する国内外の先行研究、関連する文献資料・各種官庁統計などを収集し、批判的検討や分析を進める。 (3)アンケート調査やインタビュー調査などを通して得られた知見を公表していく。すでに前年度までに、地方自治体による無料職業紹介事業についての文献・論文や新聞記事などを収集し、分析を進め、その成果の一部を学術論文としてまとめたり、日本労働社会学会の全国大会(於:聖心女子大学)で報告を行っているが、今年度以降はさらなる研究成果の公表をめざしていく。 (4)アンケート調査やインタビュー調査などから得られた地方自治体の無料職業紹介事業の地域における社会的な包摂の機能について、無料職業紹介事業の類型ごとに明らかにし、その就労施策と福祉施策の結び付き方についても詳細に解明する。その際、無料職業紹介事業の類型ごとの比較検討の視点についても重視する。そして、3年間の本研究によって得られた知見に基づいて、地方自治体による無料職業紹介事業を事例とした、日本社会における社会的包摂を目的とした地域政策の在り方についての提言を行う。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
本研究の期間は平成23年度から平成25年度となっている。次年度である平成25年度はその最終年度にあたる。次年度(平成25年度)の研究費の使用については以下のように計画している。 (1)先行研究について学ぶための社会的包摂、就労・福祉施策関係外国語図書、同じく社会的包摂、就労・福祉施策関係日本語図書の購入や、調査結果を記録したり保存したりするためのコピー用紙、ファイル、USBフラッシュメモリー、研究を遂行するにあたっての文房具の購入を目的に、物品費として9万3000円、使用する予定にしている。 (2)引き続きインタビュー調査を実施していき、地方自治体による無料職業紹介事業の実態を明らかにしていくために、地方自治体の運営する無料職業紹介センターや関連施策を実施されている事務所などをおうかがいしたり、その担当者を訪問してインタビュー調査を実施すること、また研究上の情報収集を行ったり、研究成果を公表していくために、学会の全国大会や地方部会・研究会などに参加することを目的に、旅費として16万5000円使用する予定にしている。 (3)インタビュー調査の際に教えていただいた内容を確実に分析につなげていけるように、許可を得てICレコーダーに音声を録音をさせていただいている。その際の音声データを文字おこしして紙媒体の形で保存し、その後の分析、検討の作業に使えるようにすることを目的に、人件費・謝金として3万3000円使用する予定にしている。 (4)調査を実施するための地方自治体の無料職業紹介センターやその担当者を訪問する際の連絡や、資料の郵送などを行うことを目的に、その他通信費として、10000円の使用を予定している。
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Research Products
(1 results)